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私だって…

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私の横に来た男性講師は私の描いているスケッチブックを覗きこんだ。
「いい色使いですね。見てるだけでこっちまで温もりが伝わってきますよ」
横の由美っぺはうなづきながら言った。
「雅樹先生!その人は高校時代は美術部で水彩画専門だったんです。彼女に四季モノ書かせたら、見た人は雅樹先生と同じ事を言ってました」クスクス笑った由美っぺだった。
男性講師こと、雅樹先生は私の顔を見て言った。
「そうなの!加奈子さん‥ソレ先に言って下さいよ。特別待遇したのに」
「と、特別待遇って何ですか?」
雅樹先生の言った言葉に、思わず顔が赤くなってしまった私だった。由美っぺは私の頭をヨシヨシしながら、雅樹先生に言った。
「雅樹先生!この人はあんまり免疫ないのよ。カラかったらダメです」
「すんません。ツイ、加奈子さんがイイ絵を描きますんで。あぁ、ホント良い絵ですよ。俺好きですわ。こんな色使いが」
また誉めてくれた雅樹先生だった。

私は先月‥高校時代の友達の由美っぺに引っ張られて行った場所は。ビルの1Fに入っている「絵画教室」だった。またここの絵画教室のドアの前に貼り紙をしていた。
「一筆どうですか?どんな絵でもかまいません!お好きにお描きになって下さい。画用紙1枚まで無料です。絵具・色鉛筆等当方でお貸しします オーナー 福井雅樹」
と書いてあった。
「由美っぺ‥予約もナシにいいの?イキナリ入って」
「いいのいいの!私ここの生徒ですから。行きますよん」
ドアを開けた由美っぺは、パーテションの奥に向かって声を張り上げた。
「まっさき先生!お客さん連れて来たよ!」
奥から出て来たのは長身の男性で絵を描いていたのだろうか?エプロンをして手には絵筆が握られていた。顔にも絵具がついていた。
「おぉ‥すんません。こんなカッコで」
絵筆を持ったまま、雅樹先生は私に頭を下げた。
作品名:私だって… 作家名:楓 美風