私だって…
いつもなら、午前中に買い物に出る私だが行かなかった。いや、行けなかったのだ。目も腫れてまだ頭も痛い。そら太を膝に乗せてソファに座っていた私だった。私はそら太の頭をなでながらつぶやいた。
「今日は、冷蔵庫の中にあるものでいいわ。わかりやしないわ‥出された料理を見ることもなく口に運ぶだけの人達だから」
その時だった。携帯の着信ランプが点滅した。着信名を見ると「由美子」だった。由美子は高校時代からの友達で、2年前にご主人の転勤で地方からこの土地に戻って来た。偶然にもスーパーの中で22年振りの再会をしたのだ。
「もしもし!加奈子ぉ!今いい?」
元気のいい声が携帯電話から響いた。
私は大崎加奈子 3日前に40歳になった。誰も気づいてくれなかった誕生日だったが。
「うん、いいよ。なに?由美子」
少しトーンを押さえた声で応対した私だった。