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私だって…

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雅樹先生の所で働き始めて半年が過ぎた。昨年の秋に開催した個展が大成功を収め、雅樹先生は仕事依頼も増え、またお教室も2クラス増やした。場所は都心を考えていたのだが、大阪人の雅樹先生は言った。
「違う場所でやったら無駄に経費がかかりますよって、ここでさせて下さい!曜日と時間を分けたらいいだけの事ですさかい」
雅樹先生の言うのはもっともだと思った。雅樹先生・スタッフの移動時間もいる、都心なら交通費も発生する。テナント料だってかかってくるからだ。

また、私達と雅樹先生は同年代と言う事もあって、仲良くなった。
「雅君」‥‥
仕事が終われば同年代の私達はこう呼んでいる。また雅樹先生も「由美ちゃん・加奈ちゃん」と呼ぶのだ。この年になって異性の友達がデキた事に私達は嬉しかった。

4月になって萌が高校3年生になった。来年は上の短大部に進むと思っていた私だ。でも2年生の学年末考査が終わり「保護者面談」があった。その前日に萌が言ったのだ。
「ママ!聞いて欲しいコトがあるの」と切り出した。
私は、キーボードを打つ手を止めて。
「なぁに?萌さん」顔だけ萌に向けた。
そら太を膝にダッコして萌は言った。
「ママ、明日の面談なんだけど。私、短大部に進学しない。行きたい大学があるの」
ソレを聞いた私は、カタまった。
 
翌日、オフィスで雅樹先生とランチを取っていた私は、食べながらため息をついた。
「おぉい‥どないしたん?加奈子さん‥メシがマズ過ぎでため息か?」
「いいえ‥雅樹先生!付属でエスカレーター式で上の学部に行けるのに、他の大学に行きたいってどーいうこと?」
「萌ちゃんがそー言ってるの?」
私はうなづきながら、昨日の事を雅樹先生に話した。

「そっかぁ。短大部に進まんと獣医学部のあるT大に行きたいんだ。萌ちゃん」
「はい。成績は‥親ばかしてもいい?」
雅樹先生はうなづく。
「偏差値から言えば、まぁ大丈夫かなってレベルなの。そこの獣医学部」
「萌ちゃんの通っている学校は偏差値高いもんな。有名なお嬢学校だし、加奈子ママはお受験の時さぞかし頑張ったんだろう。もちろん萌ちゃんも」
「はい、頑張りましたよ。私は萌の為によかれと思って今の学校を選択しましたけど。去年までは萌も短大部に進むつもりでしたの。それがぁ‥」

元々、動物好きの娘ではあったが。そら太を家族にしてから、獣医師の真似事をして、そら太の健康チェックをし始めた。自分でネットで調べたり本を読んだりして知識を増やしていった。今年の2月だったかな?そら太が散歩中に肉球にケガをしたのだ。萌はハンドタオルでそら太の足を押さえたが、押さえただけでは血は止まらずハンドタオルが徐々に血で赤く染まって行くのを見た萌は、私の携帯に電話をかけようと思ったが手が震えて携帯のボタンが押せなかったそうだ。

その時だった。
萌の頭の上から声がした。萌が顔を上げると男性がいた。
「ちょっと診せて。あぁ、俺は獣医師です!バス通りのさくらぎアニマルクリニックの」萌はその言葉を聞いてそら太を獣医師に診せた。
「でね!その先生‥石田拓哉先生って言うの。そら太をダッコしてくれてクリニックでそら太を診てくれて。そら太って人見知り・犬見知りするじゃない。でもね、拓哉先生がそら太の顔を覗きこんだら」
うちのそら太は今年で3歳になるが。人見知りはする、自分以外の犬はダメで仲良くできない。行きつけのアニマルクリニックでも、私や萌から離れると鳴き喚く犬だった。でもその拓哉先生には鳴きもしなかったと言う。最後の方にはそら太の方からシッポを振って拓哉先生の腕にジャレついたそうだ。また、萌はこう言った。

「拓哉先生ってスゴイんだよ。病院嫌いのゴールデンの女の子が拓哉先生に診察してもらってから、病院嫌いが治ったって。ほら!XXX王国のチンパンジーの凛ちゃんいるでしょ。その凛ちゃんが拓哉先生超大好きで、先生の所に来る度にバナナをプレセントするんだって。チンパンジーのその行為は求愛なんだって」

雅樹先生は笑いながら私に言った。
「萌っちは、その拓哉先生に魅了されて獣医師になりたいって言うの?」
「うん‥まぁそうみたい。でも将来の目標が決まったから親としては嬉しい事だけど。獣医師になるのってね‥ほら」
「あぁ、金かかるね。でもしっかり者の萌っちだ。ちゃんと調べてたのね」
私はうなづいた。
作品名:私だって… 作家名:楓 美風