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私だって…

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半年前の私は毎日が憂鬱だった。私には娘は無関心で言う事を利かない。夫は仕事男で私にはソレ以上に無関心で仕事って言えば何でも許されると思っているタイプだった。この二人に振りまわされて1日が終わる事もしばしばあった。

でも、私は変わった。

教室に入って4ヶ月目の事だった。季節は秋になっていた。レッスンが終わってみんなでお茶を頂いてたが30分程でみな帰って行った。由美っぺは今日は来てなかった。息子ちゃんの学園祭に行ったのだ。何だかんだといつも文句を言ってるが、息子ちゃんから学園祭の招待を受けて嬉しそうだった。

雅樹先生に代わって、奥のキッチンでお茶の支度をしていた時だった。雅樹先生が横に来て私に言った。
「加奈子さん、この後用事ある?」
「エ‥別にありませんけど?何か」
「じゃ、終わったら残ってね。話しがあるんだ」

雅樹先生は、ドアにかかっているブラインドを下した。
「イヤ、誤解せんといてね。込み入った話だから邪魔されたくないんだ。」
その言葉に、私はドキッとした。また顔にも出ていたのかもしれない。
「加奈子さん、俺だってモラルあるよ。人妻口説きませんってば!そんな邪悪な心ありません!神さんに誓ってもいいよ」
「すみません。雅樹先生」頭を下げた私だった。

ドアを出てから、雅樹先生は私に言った。
「俺としては、引き受けてくれたら超嬉しいです。初回に絵を描きに来てくれた時から、加奈子さんの描く絵が好きでね。またさ、俺の手が足りない時コッソリ手伝ってくれてるじゃない。ソレ嬉しいんだ」
雅樹先生は由美っぺにもこの話をすると言った。二人で交代で引き受けてくれたらとても助かると言ってた雅樹先生だった。それから1ヶ月後には、私と由美っぺは雅樹先生のアシスタントとして教室のお手伝いをすることになった。雅樹先生は私達に依頼したのは理由があった。
「来月に個展開くんです。ここで1週間程!もう作品も大分出来あがったんですけど。追い込みに入りたいんですよね。それに仕事依頼が増えまして、もう1教室開く事にしました。そっちの準備もあるんで。手伝って頂けたらと思って。余り高い日給は出せませんけど。アシスタントで俺の元で働いてくれませんか?」と言った雅樹先生だった。
この話は私にとっては嬉しかった。由美っぺも仕事を探していたので、雅樹先生からのお誘いは嬉しそうだった。私達は引き受けることにした。

人に教えるってコトは自分の為にもなることだ。忘れかけていた初歩的な事も思い出し、また質問されて答えられないなんてカッコ悪い事はしたくない。雅樹先生に恥をかかせてしまう。私と由美っぺは、雅樹先生にも教わりながらもまた自分達でも勉強した。その成果が出て今の所、質問されても何とか答えている。私は家でも和室を片付けて自分の部屋にした。折りたたみテーブルに座布団とライトスタンドだけだが、そこで勉強をした。家事の合間も見計らって勉強した。以前ならソファでテレビを見たり雑誌を読むだけだったが。勉強の為に自分専用のノートパソコンとプリンターも買ってネットで調べ物をするようになった。自然と和室に籠る時間が多くなっていった。
作品名:私だって… 作家名:楓 美風