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遅くない、スタートライン 第3章

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第3章(6)

誰か…私の名前呼んでる?誰か…私の手を握ってる?お姉ちゃんかな?眼を開けたら白い天井が見えた…
私は意識を取り戻したようだ。

「い…樹さん!大丈夫?どっか痛いとこない?気分悪くない?」
男の人の声がする。この声聞いたことがあるわ…
「美裕さん!しっかりして。俺だよ!俺…MASATO!」
「わ…私どう…したの?」まだ声も途切れ途切れしか出なかった私だ。
「駅前の交通事故見て、美裕さん意識がなくなったんだ。横にいた年配の女性が大声で駅員さん呼んでさ、俺…改札口から出てきたところで、なんだこの騒ぎはと思ってその女性の方に行ったら!これ」

MASATO先生は、私のリュックサックのパスケースを指さした。
「昨日の今日じゃないか!一緒に駅まで帰ってきたやん。そのパスケースがかわいくて、俺は美裕さんに聞いたでしょ?それかわいいな!どこで買ったの?って」

あぁ…そう言えば私の持っていたスイカのパスケースをMASATO先生が気に入ったらしくて、ウェブサイトで買ったショップを教えたんだっけ?
「俺…写メ撮らせてって言ってスマホで撮ったでしょ。写メまで撮ったんだ…間違うわけない!倒れてる女性の顔を覗き込んだら、美裕さんだったんだ。で…俺は一緒に救急車に乗り込んで付き添ってました。お家の人に迎えにきてもらう?」

「すみません。MASATO先生…イエ…私一人暮らしなんで。もう少ししたら自分で帰ります」
「え…一人暮らしなの?美裕さん」
MASATO先生は驚いたようだった。そりゃ驚くよね…一軒家に一人暮らしなんて思いもしないわ。


それからすぐに点滴が外された。看護師さんと診てくださった先生が病室に来ていた。
「ビックリした。あなた運ばれてきたときは…ここ数ケ月来ないと思ってたらね」
看護師さんは私の点滴を外しながら言った。

「私も驚いたわ…あなたが運ばれてきた時に付き添った人見て!」
「すみません…先生」私はベッドの中でつぶやいた。
MASATO先生は、「?顔」してるし。私はMASATO先生の顔を見て言った。

「ここの病院で私入院してたの。その時の主治医の先生と担当の看護師さんです」
「そうなんですか…」納得したようだ。
「この美裕さんメッチャ手がかかって、やっと退院したと思ったら救急搬送されてくるし。美裕さん!お姉ちゃんに電話しようか」
「いいです。自分で帰ります」と言ったら…

「ダメ!今は点滴が効いてるからいいけど。あぁ…」先生はMASATO先生の顔を見てニッコリした。

また、私はMASATO先生の車で家まで送ってもらった。MASATO先生は車の中で、何も話さなかった。きっと、怒ってるんだ…私の事!私はMASATO先生と眼を合わすのが怖くて視線を窓の外に向けていた。信号が赤信号になり、MASATO先生はブレーキを軽く踏んだ。その時だった…

「美裕さん!黙ってるけど、まだ気分悪いの?もうすぐ家だけど大丈夫か?」初めてMASATO先生が口を利いた。
「大丈夫です…MASATO先生すみません。怒ってらっしゃいますよね?私の事…すっかりMASATO先生にご迷惑をおかけしてしまって、ホント申し訳ございませんでした」私はMASATO先生に頭を下げた。

「何言ってるん?美裕さん…俺怒ってなんかないよ。怒ってたら車で送らへんわぁ…あぁ!俺が怒ってるかと思って黙りこくってたんだ」
MASATO先生は、私の顔を覗き込んだ。
「何で怒らなあかんの…ま、驚いたけど。公然と美裕さんを家まで送り届けれるし、あの主治医の先生には感謝だ」
「ほ…ホントですか?怒ってないの?」私はもう一度聞いた。
「うん!あぁ…おなか空いてない?のど乾いてない?」
「…のどが渇いた。実はお昼ごはん食べ損ねちゃって…おなかも空いてるんです」
私は顔が赤くなるのが自分でもわかった。

主治医の先生は、送って行けと言ったが、あとは何も言わなかったな。俺はそう解釈した…でも一旦家に送り届けた方がいいかな?俺の頭は美裕さんの家の近くの飲食店を思い浮かべていた。初めて送ったときに、ナビで入力した住所がメモリーに残っていたから、俺は言うまでもない。家に帰って、マップや美裕さんちの周辺を検索しておいたんだ。次の信号を左に曲がって、坂道を登れば美裕さんちだ。

「美裕さん…おすすめの飲食店とかある?美裕さんは何が好き?」
俺のその声に美裕さんは、ちょっと顔を赤らめた。何でだ?

「すみません…私はこの界隈で一人で飲食店とか入ったことないの。いえ…実はアレルギー体質で制限されてるものが多くて。あ!MASATO先生!よかったら、うちでご飯食べません?車庫もあるんで…お車そこで停めていただけたら」
俺は美裕さんの申し出に驚いて、一瞬カタまったようだ。
「あ…ご迷惑ですよね。すみません…」美裕さんはまた俺に頭を下げた。

「ち、違うんだよ!独り暮らしの女性の家に上がってもいいのかな?って思ったから。俺的には非常に嬉しいお誘いだからお邪魔したいんだけど」
夕暮れのせいか、MASATO先生の顔が赤いような気がしたのは…私の思い過ごしかな?