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遅くない、スタートライン 第3章

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第3章(3)

愛先生を近くのレストランで待っていた俺は、テーブルの上で樹さんが書いた原稿を見ていた。今日の課題と副校長が貸してくれた履歴ファイルと見比べていた。俺は愛先生をがテーブルに来たのも気づかずに、樹さんの履歴ファイルを見ていた。

「失礼ね!誘っておいてご挨拶もなしか?マサ坊」
「おぉ…すんません。イエ…副校長に貸してもらった履歴ファイルを見てましてね」
「誰か光る子でもいた?」
俺は愛先生に履歴ファイルを見ての名前を指さした。

「あぁ…この人ね。この人はちょっと他の生徒とは違った雰囲気持ってるわね。うーん、幼く見えて達観してるところある。あんたが書く文章みたいに!あぁ…MASATO先生の大ファンだったわ。この樹さん」
「ありがたいことに、俺の書いた文章で前を向けて今の自分がいるとまで言ってくれました。詮索するわけじゃないけど、気になっちゃって」
「まぁ…人それぞれ色々事情があるし、言いたくないこともあるわよ。もし何らかの機会があってわかったらどーすんの?あんた」
俺はその愛先生の言葉に、胸がドキッとした。

愛先生をタクシーで自宅まで送り、俺はそのまま行きつけのスポーツクラブに行った。ここのスポーツクラブは午前0時までやってるんだ。家の近くだから、頭が煮詰まったら体を動かし、汗を流すと頭がスッキリするんだ。また頭もスッキリするが、胸の中のモヤモヤしたものも浄化すると思ったんだが…

家の書斎でパソコンをONにし、しばらく画面を見ていたが。頭の中は樹さんが99%占めていた。何がこんなに気になるんだろう?俺はますますわからなくなった。その日はもう寝ることにした。作家業してると万年睡眠不足になるからな!

それから、俺は取材旅行や講演会などで、1ケ月ほど養成スクールに行けなかった。俺の代行を作家ダチにしてもらった。自宅に帰ってきた時に、その作家ダチから添付ファイル付きのメールが2通来ていた。ダチはメールの題名もなくただ「1」と「2」と本文に書いてただけだ。まさか、作家ダチのなりすましがウィルス付きの添付ファイルを送ってきたのか?俺はパソコンの画面を見て、開けるかどうか迷った。だってよぉ…最近怖いじゃないかぁ。ウィルスに感染したら、俺は作家だし書いた原稿や取材の写真がウィルスでダメになったら、泡吹いて倒れるぞ!その時だった…俺のスマホに電話が入った。

「あぁ…そうだったんだ。ありがとうな!題名もないしよ…おまえのなりすましが送ったウィルス付きかと思った。うんうん、わかったぁ。どもうありがとうな。この礼はまた今度な」俺は電話を切った。

ダチが気を利かしてくれて送ってくれたものは…養成スクールで月ごとに課題を出し、原稿用紙20枚ほどのエッセイや短編小説などを生徒に書かせて提出させている。また学校長・副校長・養成スクールの講師陣が提出作品を添削し、いい作品などは養成スクールか管理しているWebサイトに掲載される。今回は俺の作家ダチも添削に加わったそうだ。

俺はマウスをクリックし、上位作品の生徒の名前を見ていた。
「おぉ…やはりいたか!」俺は…その生徒の名前をマウスでクリックした。