遅くない、スタートライン 第2章
第2章(1)
午前の講義が終わった。生徒達はグループになって教室を出て行った。
私も教室を出て、道路を挟んである公園に向かった。家からお弁当を持ってきたのだ。
公園に入ってあたりを見回すと、いつも座るベンチに人がいない!このベンチは、
木陰になっていて、風もよく通るし。お弁当を食べるにはいい場所だ。
「いただきます」お箸を持って、頭を下げた。
その時だった。
なんか…今、笑い声が聞こえたのだ。
私…おかしいことしたかな?
お箸を持ったまま、周りを振り返ったが誰も居なかった。
空耳か!気を取り直して、お弁当を食べ始めた私だった。
お弁当も食べ終わり、お弁当のふたを閉めて。
「ごちそうさまでした」と頭を下げたら…また笑う声がした。
いったい!何なの?誰なの?
振り向いたら、ベンチに男の人がいて口に手を当てて笑っていた。
「す、すみません。あまりにも…いや、いい風景でほっこりしちゃった。またかわいい声だ!」
私は呆気にとられて、口もきけなかった。
またその男の人は、私のお弁当箱を指さしてこう言った。
「お弁当箱もかわいいです。俺もそのキャラ大好きです」
「そ、そうですか」と、私は答えるだけでいっぱいだった。
男の人が、声がする方向に顔を向けた。
「はいはい!今行く」と立ち上がった。そして私にバイバイをした。
私はツラれて、手を振ってしまった。
男の人は、笑顔で私にうなづき返した。
教室に戻ると、なんだか騒がしかった。
私の横の席の生徒が、興奮気味にしゃべった。
「く、来るんだって!今ジワジワ売れてるあの人!」
「って誰なの?」聞き返してしまった。
その時に、午後の講義が始まるチャイムが鳴った。
作品名:遅くない、スタートライン 第2章 作家名:楓 美風