真一君のバレンタイン
「で…何で葉月ねーちゃん、僕の手助けが必要な程 クッキーを手作りする訳?」
居間に通された真一君。
ソファーに腰を下ろして直ぐ、正面に座った桔葉さんに尋ねました。
「ホワイトデーに…必要だから。」
「話が…見えないんだけど」
「不本意ながら…バレンタインに、大量にチョコを貰っちゃってねぇ」
「…」
「経済的な理由から…お返しのクッキーを、手作りする事にしたの」
真一君の胸で、ノイズな感情が芽を出します。
「確認するけど…チョコを大量に貰ったのは、誰?」
「わ・た・し」
「なのに…何で葉月ねーちゃんが、お返しを手作りする訳?」
強い言葉を投げかけられ、桔葉さんは俯きました。
「ど、努力はしたのよ…私だって。」
いきなり、立ち上がります。
「─ 料理を振る舞って済むなら、そうしてるから!」
口を挟む暇を与えず、畳み掛けました。
「何故か お菓子作りは…料理とは、勝手が違うのよ!!」
作品名:真一君のバレンタイン 作家名:紀之介