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ミッちゃん・インポッシブル

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「で……説明して頂けますね?」
 事務所に戻ると四方はそう切り出した、秘密を明かさなければならない時が来たのだ。
 と言っても四方が相手ならば秘密を明かすことに何の不都合もリスクもない、帰る道々ずっと考えてそういう結論に達した光子は迷わずハンドバッグから魔法のコンパクトを取り出した。
「それはあの時のコンパクトですね?」
「ええ、これ、魔法のコンパクトなんです」
「魔法?」
「信じられないでしょうが……」
「いや……待って下さいよ……光子さん、あなたはもしやドラッグストアでミッちゃんと呼ばれている女性と同一人物なのではありませんか?」
「え? どうしてそれを……」
「これでも一応探偵ですから……言葉の端々に現れる微妙な口癖やイントネーション、柔らかな物腰、優美な所作……色々なところが妙に似ていると感じていたんですよ、そして光子さん、あなたの服からはドラッグストアの匂いがかすかにするんです……しかし外見は変装で変われるレベルの違いではない、ですからそんなはずはないと打ち消していたのですが、そこに魔法と言う要素が加わるならば……」
「さすがに……実はこの魔法のコンパクトを開いて変身したい人や動物を思い浮かべて呪文を唱えると……」
「にわかには信じがたいですが……」
「でも本当なんです、証拠をお見せしますね……テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、ミーちゃんになぁれ!」
 光子の体が七色の光に包まれたかと思うと、光子は消えて代わりにミーちゃんが……。
「ニャ~」
「……な……何と! 自分の目が信じられないと思ったのは初めてだ……」
「ラミパス、ラミパス、ルルルルルン……信じていただけますでしょう?」
「目の前でネコに変身されては信じないわけには行きませんね」
「では、次はミッちゃんに……」
「いえ、それには及びません」
「でも……」
「……光子さん、私はありのままのあなたが好きなのです」
「え?……でも、ミッちゃんの方が……」
「確かに彼女は美人です、でも、ずっと変身したままでいないと言う事は、ミッちゃんを演じる事は多少なりとも疲れる、そして本当の自分を見失ってしまいそうで怖い……そういうことなのではありませんか?」
「は、はい、その通りです……」
「ならば私の前では変身する必要はありませんよ」
「四方さん……」
「そろそろその呼び方も変えていただけませんか? 少し堅苦しい感じがします」
「正……さん?」
「私も『光子』と呼んでも構いませんか?」
「え、ええ……その方がずっと……」
「良かった……光子、好きだよ……愛してる」
「正さん」
 正の胸に飛び込んだ光子は、三十三歳にして初めてのキスを正に捧げた……。


「いらっしゃいませ……どのようなご用件でいらっしゃいますか?」
 四方探偵事務所を訪れた人は、柔らかな物腰、丁寧な言葉遣い、気持ちの良い笑顔で迎えられることになる。
 そう、光子はドラッグストアを辞めて、四方探偵事務所の助手に、正のパートナーとなったのだ。
 そして、光子の左手の薬指には正から贈られたエンゲージ・リングが光っている……公私共にパートナーとなる日も近い。

 そう、本当の魔法は確かに光子の心の中にあった……。
 そして、幸運にもそれを見つけてくれる人と出会うことが出来たのだ。

(多分……続く……)

作品名:ミッちゃん・インポッシブル 作家名:ST