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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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珍しいお客様(「お星様とギター」とのクロスオーバー)

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 珍しいお客様がもうすぐ料理を食べ終わるというとき、純ちゃんがギターを持って、お客様の横に座った。
(あら、純ちゃん、曲を披露するのかしら)
 心の中でそう言っていると、純ちゃんは、
「ロザリー、シング、プリーズ」
 って、まさかの発言をした。言われたほうは、目をまん丸くして彼を見て、人さし指で自分の胸を指して、
「ミー?」
 って言った。私も純ちゃんのほうがお得意の歌を披露して、お客様を笑顔にするとばっかり思ってたから、無理もないかも。
「イエス、イエス、プリーズ」
 彼は、歌ってもらう気満々だ。でも、ロザリーのほうは、何だか複雑な顔をしてた。それでも笑顔でOKして、純ちゃんに何か聞いてた。すると、純ちゃんが
「ローズ。ベット・ミドラー」
 って言ってた。ロザリーは首を縦に振って、準備して、純ちゃんのきれいなギター演奏が始まった。その上に、ロザリーが伸びやかで、かつ、魂を込めた歌声を乗せてくる。
(やっぱり、本物の歌手の声は違うわ…)
 聞きながら、そう思ってた。そしたら純ちゃんは、大胆にも後半でロザリーと見事なハモりを始めた。私だけのスターは、やっぱりいつでもステキ。

 曲が終盤に差しかかったとき、何だかロザリーの目が潤んでた。曲が終わると、私は強く、長く拍手をした。彼女は、
「サンキューベリーマッチ」
 と言いながら、私に手を差し出した。もちろん、私は握手した。そのあと、ギター伴奏をしてくれた純ちゃんとも笑顔でがっちり握手をした。ちょうどそのとき、私に宿ってる子が動いた、というか踊ったといっていいかもしれない。私も、自然とほほ笑んだ。
 でもそのあと、ロザリーはなぜかうつむいて目を閉じて、目を拭いてた。私は、ちょっと不思議に思った。ロザリーは、涙声で何か言い出した。英語だから意味は分からなかったけど、私は思わず彼女の背中に手を当てた。純ちゃんのほうは、困ったような顔をしたけど、次第に慰めるような目で私たちを見てた。

 やがてロザリーがお店を出る前に、私の大きなおなかをなでてくれた。そのときの彼女の眼差しは、とても、とても穏やかで優しかった。


 その日の夜は、満天の星が輝いていた。あの人も、どこかでこのきれいな夜空を見ているのかしら…。