第四章 動乱の居城より
僕がいなければ、姉様が家督に呪縛された。親族たちの都合のよい男が、姉様をほしいままにした。
僕の存在が、姉様を解放する。
つまり、僕は愛する姉様を守るために生まれてきたのだ。
「ハオリュウ」
姉様が僕を呼ぶ。
無垢な笑顔で、僕を呼ぶ。
「あなたは優しい子ね」
姉様の瞳の中には、花を摘んでいた五歳の僕がいる。
「姉様」
僕は応える。
「姉様のことは、僕が守るよ」
姉様が幸せになるためなら、僕はなんでもしよう。
花束に輝く朝露の雫は、もう僕の瞳から流れはしないから。
ここまでお読み下さり、どうもありがとうございました。
第五章は、2017年8月末ころから、週に一度投稿します。
作品名:第四章 動乱の居城より 作家名:NaN