謝恩会(中編)~手からこぼれ落ちる~
要がそう言って陽人の肩を持つと、「ええ? そんなつもりではなかったんですけど……」とうろたえ始めた。要はいつもの調子で「さあ行こう行こう、俺たちの可愛い弟妹のために!」と明るく言った。すると湊人が要にかぶりついて「オレはおまえの弟じゃない!」と叫んだ。
病院の外に出ると、あの境目のない海と空が広がっていた。ここを訪れた時とは違う、清涼な山の空気が肺のすみずみまで行きわたる心地がした。
作品名:謝恩会(中編)~手からこぼれ落ちる~ 作家名:わたなべめぐみ