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陰陽戦記TAKERU外伝 ~拓郎編~

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 僕達は森の中に入った。
 何かあるといけないので女の子の美春ちゃんを先に進ませる訳には行かない、僕が先頭になって伸びまくりの雑草を掻き分けながら先へ進んだ。
 昼間だと言うのに薄暗くジメジメしてる…… これが夏場だったら大変だろうな、本当に春で良かった。
 もし今が夏だったら暑苦しいし藪蚊は多いで大変だ。
「ったく、大介の奴…… 絶対承知しないぞ」
 僕は愚痴った。
 すると美春ちゃんがクスリと微笑した。
 それに気が付いた僕は尋ねた。
「どうかしたの?」
「ああ、ごめんなさい…… 拓郎君、何だか武先輩みたいだなって」
「先輩に?」
「だって、そうやって愚痴っててもなんやかんやで探してあげるじゃない…… 普通だったら面倒くさがって助けたりしないわよ」
「先輩は特別だよ、何しろ…… あっ」
 僕は慌てて口を塞いだ。
 危うく秘密を漏らす所だった。
 別に話した所で死ぬ訳じゃ無いし、泡になって消える訳でも無い。
 言った所で信じてもらえないだろうし、美春ちゃんだって直接じゃないけど巻き込まれている、あれは京都一の大富豪で先輩が入った火野酉財団が警察に頼み込み、情報操作で強盗の仕業と言う事にしてもらったからだ。
 余計な事を思い出させて事態をややこしくする訳にはいかない、僕は咳払いすると話しをはぐらかす事にした。
「先輩は面倒見が良いって言うか、困ってる人を見捨てておけない性分でさ…… 僕も相談に乗って貰った事があるだけなんだ」
「そうなんだ」
「そうそう、それで僕も見習おうって思っただけだよ、それより先を急ご…… 痛っ!」
 僕の指先に痛みが走った。
 見ると小指に赤い筋が走ると血が流れた。
 どうやら葉っぱの先で切ったらしい。
「あっ、大変!」
 美春ちゃんは私の側に近付くと腰のウェストポーチから消毒液と絆創膏を取り出した。
「ちょ、美春ちゃん!」
 僕は両肩がビク付いた。
 僕達は一応交際はしてる物の手なんて繋いだ事が無い、中学のキャンプのフォークダンスの時に一度触れただけでそれっきりだった。
 でも美春ちゃんはそんなの気にしてないみたいだった。
「ダメよ、いくら獣医だからって人間の傷をほおって置いて良い訳無いでしょう」
 そう言いながら美春ちゃんは僕を手当てしてくれた。
「あ、ありがとう」
 僕は手当てされた指を見ると頬が緩んだ。
 美春ちゃんも微笑しながら僕を見た。
 するとその時だ。僕の頭に水滴が当たった。
「ん、雨?」
 見上げると覆い茂っている青葉を突き抜けて無数の水滴が降って来た。
 しかも雨脚はどんどん強くなって来た。
 雨宿りできそうな場所は無い、まして戻るにも時間がかかり過ぎる…… 僕達は慌てて先を急いだ。
「参ったな、雨具持って来て無いのに……」
「あっ、拓郎君、見て!」
 すると美春ちゃんが指を差した。
 その先を見てみると木々の合間に何かが見えた。
 良く見えないが何かの建物みたいで、その方向に向うと森を抜ける事ができた。
 ドーム状に切り開かれた森の中にそれは建っていた。
 一階建てだけどとても大きな棟が2つ、中央では互いの中に行き来する為の通路と屋根が取り付けられた。真上から見ると丁度Hの字になる建物だった。
 丁度学校みたいな作りになっている、ただしもう何年も手つかずのボロボロ、ガラスも砕けて今にも崩れ落ちそうな…… いかにも何か出そうな感じの廃屋だった。
「ここって……」
 僕は大介の話を思い出した。
 ここは戦時中の医療施設だ。
「拓郎君、雨宿りしましょう!」
「あ、うん!」
 美春ちゃんに言われて僕達は施設の中に入って行った。