小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

陰陽戦記TAKERU外伝 ~拓郎編~

INDEX|3ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 
 
 それから直ぐ授業が始まった。
 この学校は午前中は授業、午後からは実技になる、この大学の付属病院で患畜の世話をするのが僕達の仕事だ。
 と言っても僕達はまだ本格的な事はやらせてもらえない…… でも幸運な事に美春ちゃんと一緒だった。
 僕は手術を終えた芝犬を抑えつけ、美春ちゃんは骨折した右後ろ足に包帯を丁寧に巻きつけるとエリザベス・カラー(傷口を舐めない様にするプラスチックの襟巻)をはめた。
 彼女は元々家の手伝いをしていたから手慣れた物だ。
「はい、おしまい、直ぐに元気になりますからね〜」
 小春ちゃんは右手で子犬の頭を撫でながら甘声で言った。
 彼女こそ本当に獣医に相応しかった。
 良くネットで見かけるけど、中には酷い手術や手当をして嘘みたいな金を巻き上げる無責任な獣医もいる。
 それで可哀想なのは動物達だ。
 僕達は絶対そんな獣医にはならない、その為に必死に勉強して自分の店を持つつもりだ。まぁ、1番手っ取り早い方法はあるにはあるんだけど……
「ん? どうしたの?」
「えっ? あ、いや、別に……」
 僕は顔を反らした。
 すると美春ちゃんは不思議そうに首を傾げた。
 でももし僕の考えてる事が現実になるなら、きっと毎日こんな感じで仕事するんだろうなと思った。
 
 実技も終わり、病院も閉院となった。
 後片付けも僕達の仕事だ。
 床を箒で掃いてモップかけると診察中に出たゴミと一緒に纏めて大介と一緒にゴミ捨て場に持って行く…… その途中だった。
 大介は両手に持った大きなゴミ袋を見ながら口を尖らせた。
「やれやれ、教授達出すだけ出して手伝おうとしねぇんだからなぁ」
「ボヤくなって、さっさと終わらせよう…… 今日合コンあるんだろ?」
「ん? まぁな…… 今度こそ彼女をGETしてみせるぜ!」
「ま、がんばりなよ」
 僕は苦笑しながら言った。
「今回はとっても良いネタを仕入れたんだ。拓郎、聞いたか?」
「いや、別に」
 僕は即答する。
 こいつは極度の都市伝説マニアで、合コンの席でそれを披露している、それが原因で彼女ができないのかどうかはわからないけど……
 だけど僕の意思とは裏腹に大介が言って来た。
「この駅から少し離れた場所に森があるだろ?」
(……聞けよ)
 心の中でそう思った。
「あそこで幽霊が出るって言われてるんだ。なんでも旧日本軍の医療施設があったらしくてさ…… 搬送されたものの命を落とした兵士達の魂が成仏できずに彷徨ってるって噂だぜ」
「へ〜〜」
 僕はカラ返事をする。
 今のこのご時世に何言ってんだ? ……と言いたいのは山々だけど僕の場合はそうもいかなかった。
 何しろ幽霊とか鬼とかそう言った類の物をこの目で見て来たからだ。
 そう言えば先輩の友達にそう言う人がいたな、今じゃその人はネットでも有名なオカルト・マニアとなり、自分のホームページを作り上げてファン(信者と呼ばれてるらしい)を増やし、彼らの間じゃ『陛下』と言う名で呼ばれているらしい。
 多分その人から聞いたのかもしれないな……
「成仏できずにいるとすれば、やっぱ『お国の為に死ねない』とか『愛する者へ』とかそんな感じだろうな、そもそも幽霊ってのは……」
 聞いても無い事をペラペラ言って来る、どうせネットか何かの請け売りだろうに……
 僕はため息を零した。
 全ての学業が終わり、僕は荷物を纏めると一度校舎の方に向かった。
 靴を履き替えると駐輪場に止めてあるスクーターに乗って校門を潜った。
 途中スーパーによって食材を買う、この時間ならタイムセールでお総菜が安い今日はコロッケに特売シールが貼られていた。
 他にも歯磨き粉がそろそろ無くなるので一緒に買い物籠の中に入れ、全ての用事を済ませるとスクーターの前かごに荷物を入れて再び走り出した。