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陰陽戦記TAKERU外伝 ~拓郎編~

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 やがてそれは人の形を成していった。
 50代後半の、白髪交じりの頭に鋭い目、結構大柄な体にYシャツとネクタイ、下には白いズボンと黒い靴、さらにその上から白衣を羽織った。見るからに医者と言った感じの男だった。
「どうやら親玉のお出ましらしいな」
「親玉?」
 僕は業務日誌に挟まっていた写真を思いだした。
 その写真の中にこの男は写っていた。
 かつてここの責任者で、細菌兵器処理を拒んで自殺した『岩村國彦』だ。
 こいつも無念の死で成仏できずに鬼になってたんだ。
「拓郎君、下がっていたまえ」
 石動さんは臨戦態勢を取る。
 すると岩村は低く唸りながら言って来た。
『……譲らん、絶対譲らんぞ! 私の研究、絶対無駄にしてなる物かぁぁ――っ!』
 岩村は絶叫しながら両手を伸ばすと陰の氣の塊を飛ばして攻撃して来た。
 すると石動さんは強く握った拳でそれを打ち払った。
 払われた陰の氣は壁や天井に当たって爆発し、僕の頭上から砕かれたタイルがパラパラと落ちて来た。
「うわあっ!」
「拓郎君!」
 石動さんは僕の方を振り返る。
 しかしその行動が仇となった。
 その刹那の隙を狙って岩村は大きく口を開いた。
『かああぁぁ――っ!』
 口の中から黒く小さな針が飛び出すと石動さんの左肩に突き刺さった。
「ぐわっ!」
 石動さんは攻撃を受けた衝撃で後退すると鉄格子に背中を叩きつけた。
 僕は石動さんに向かって叫んだ。
「石動さんっ!」
「大丈夫だっ!」
 石動さんは右手を開いて突き出すと凍てつく冷気が噴き出して岩村を襲った。
『ギャアアッ!』
 岩村は苦しみに顔を歪めると人型の形が崩れて黒い煙と化し、部屋の奥へと去って行った。