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陰陽戦記TAKERU外伝 ~拓郎編~

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 僕達は再び歩き出して10分もかからないだろう、目の前に崩れかかった扉を発見した。
 僕達は力を合わせて扉を引きはがして中に入ると、そこは今までの掩体壕のような作りとは違い、天井からは小さな傘の付いた電球がぶら下がったタイル張りの部屋になっていた。
 その部屋からさらに奥に続く廊下があり、廊下を抜けた先には手術室があった。
 まだ左右に扉があって先に進めるのだけど、僕達は部屋の様子を見回して息を呑んだ。
 本来薬瓶等が並べられていたであろう棚、床に散らばった錆び付いたメスや鉗子などの手術に使う道具、ボロボロになった緑色のシートがかぶさった手術台が置いてあった。
「ここで犠牲になった人達の怨念が鬼を作り出したんだな」
「何て事を……」
 僕は怒りに震えながら拳を握りしめた。
 僕は獣医だ。断じて人間の医者じゃ無いけどこれだけは言える、本来医術とは命を救う為の物だと思ってる。
 細菌や病原菌は悪い印象があるけど、使い方次第で薬になるって聞いた事がある、でもここにいた医者は人を不幸にする為に医術を使っている…… いくら戦争に勝つ為だからって命に対する冒涜だ。
 僕がそう考えている時だった。
「ん?」
「どうした?」
「いえ、声が聞えませんでした?」
「声? 別に何も」
「いえ、確かにこっちから……」
 僕は左の方の扉へ向かった。

 開いてみるとそこは鉄格子の扉があった。
 鉄格子自体は開いたままになっているけど、内部を携帯のライトをかざして見ると中には人間がすっぽり入る位の無数の黒い球体があった。
 その球体には見覚えがあった。
「これは……」
 僕は牢屋の中に入ると球体に手を触れる。
 すると球体が透明になると中に収められていたものが見えた。
 それは案の定人間だった。多分僕より年上だろう男の人が蹲り、うなされながら眠っていた。
 この黒い球体は人間に強制的に悪夢を見せる事で陰の氣を生産する事が出来る、ようするに鬼にとっての食糧タンクみたいなものだ。
 さらに僕は球体を調べまくると、やがてその1つの中に大介や美春ちゃんを発見した。
「今すぐ助けないと!」
「待て!」
 石動さんは僕を止めた。
 ふと後ろを見るとそこには緑色の炎の様な物が宙に浮いていた。