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陰陽戦記TAKERU外伝 ~拓郎編~

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 僕達は地下に通じる道を探した。
 元々僕達がいた棟には何も無かった。
 別の棟に移動して片っ端から探して行くと、ある左右両開きの大きな部屋を発見した。
 でも鍵がかかっているのか、はたまた錆び付いているのか分からないけど扉は開かなかった。
「退きたまえ」
 石動さんは右手でドアノブを握りしめると静かに目を閉じた。
 すると今は4月だし、今日は寒い訳じゃ無い…… だけど僕の周りをひんやりとした空気が包み込んだ。
 すると石動さんの右手からドアノブが凍り始め、思い切り力を入れるとドアノブをへし折った。
 彼は氷を操る…… つまり僕と同じ土属性の陰陽師って事になる。
 僕に力を貸してくれた玄武は土属性を守護する聖獣で、戦う際にはハンマーになってくれた。
 その為に僕は大岩や鉄をも砕く強力な力とあらゆる物を凍てつかせる冷気…… 他にも地割れや地震などを起こす事が出来ようになった。
 はたまた大自然の持つ自然治癒能力で、傷ついた者を癒す事も可能で、先輩達を治した事だってある。
「さ、行こう」
「はい」
 石動さんは扉を押して中に入ると僕も後に続いた。
 中に入ってみるとそこには床に埃を被って入ってみると、破棄されてから誰も入った事が無いんだろう、かなり埃を被っているけど分厚い鉄製の扉が床にあった。
 僕達は扉を開けてみると丁度人2〜3人分が肩を並べて歩けるくらいの階段を発見した。
 恐らく担架に乗せた状態で横一列になって運べるように設計されたんだろう…… やっぱり地下に作られているだけあって奥の方は何も見えなかった。
 僕達は階段を下りて行った。

 闇の中にカツンカツンと言う音だけが響く。
 しかも当たりは真っ暗…… 天井には電灯くらいはあるだろう、でも電気が無いから明りも突いて無かった。
 すると石動さんは振り返って僕の顔の前で全ての指を真っ直ぐに伸ばした右手を近付けると人差し指と中指をだけを伸ばした左手を手の甲に重ねた。
 そして目を閉じて何やらブツブツと呪文の様な物を唱えるとカッと目を見開いた。
「これで辺りが見えるはずだ」
「あっ……」
 僕は目を見開いて周囲を見た。
 何と真っ暗な地下のはずが昼間の様に明るく見えていた。
「私の陽の氣を少し分けて君の眼球に注ぎ込んだ。使い方次第じゃこんな事もできるようになる」
 石動さんは白い歯を見せて笑った。

 僕達は先へ進んだ。
 周囲は意外とシッカリとした作りになっていた。恐らく爆撃される事態も想定されて作ったんだろう。
 カマボコ状に掘られて土が零れ落ちない様に天井や床もセメントで固められている…… 歴史の教科書で読んだけど、防空壕と言うより掩体壕(えんたいごう)だった。
 普通の防空壕とは違って頑丈に作られているから大事な施設だったんだろうって事は分かった。
 途中無数の鬼達が僕達を襲って来た。
 人間の頭くらいはある黒い外殻に覆われた丸い体に節足動物の足が左右に3本づつ、計6本の1つ目のダニの様な鬼達だった。
「はあああっ!」
 無数に襲いかかる鬼達を石動さんは全て撃破して行った。
 しかも年の割に息1つ切らして無かった。
 不思議そうに見ていると石動さんは言って来た。
「伊達に前線で戦って来た訳じゃないからね…… このくらいの鬼なら歯牙にもかけないさ」
「どうして…… そこまで?」
 僕は尋ねてみた。
 すると石動さんは不思議そうに聞き返した。
「何だ。鬼と戦う事が悪い事かね?」
「そうじゃありません、ただ…… 辛く無いですか?」
 僕は言った。
 戦いなんてただ痛くて苦しいだけだ。
 玄武の治癒再生能力を使って皆の回復役に回っていた僕だから分かる、傷を治してもまた傷つけば元も子もないと……
 あの時は暗黒天帝や四凶達のやる事が許せなかった訳だし、特撮ヒーローが好きだった事もあってそれが当たり前になっていた。実際玄武が鎧化してくれた。
 でも今は違う、まして振り返って考えてみる、戦いが終わって果たして何を得たかをだ。
 先輩の場合は運が良かった。もし今『彼女』が現れなかったらどうなってただろう…… 塞ぎこんではいないだろうけど、穴の空いた風船の様に空っぽの人生を送っていたかもしれない。
 すると石動さんは一間置いて言って来た。
「確かにその通りだな、私だって痛いのは御免被るし、戦わずに済めばそれで良い…… 鬼になる前の魂なら簡単だ。だがそれが出来なかったらどうする? 鬼と化した魂達は最早『破壊』の二文字しか無い、それでも君は戦わないか?」
「そ、それは……」
 僕は口ごもった。
 すると石動さんは息を吐いた。
「すまない、君を責めてる訳じゃないんだ。ただ覚えていて欲しい…… 世の中には戦わなければならない時もあると言う事をね」
 石動さんは苦笑して答えた。