小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

陰陽戦記TAKERU外伝 ~拓郎編~

INDEX|10ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 

 この施設は第二次世界大戦中に医療目的で建てられた施設で、何人もの傷ついた兵士達が運ばれて治療を受けていた。
 とここまでは良く聞く話だし、大介が言っていた事と大して変わらない…… でも問題はこの後だった。
 収容された人達は地下に作られた研究施設で人体実験のモルモットにされたと言う。
「人体実験?」
 僕の本を持つ手が震えた。
 この日誌によると地下では細菌兵器が研究されていて、実験台にされた兵士達は皆命を落としたと言う。
 敗戦が決まると同時に研究されていた細菌は全て破棄する事が決定されたのだけど、この病院の院長で細菌兵器の責任者だった『岩村國彦』と言う人物だけはそれに猛反対し、『自分の生涯の研究が無駄にされるくらいなら』と自分自身に細菌を射ち込んで自殺したと言う。
 すると石動さんは言って来た。
「この数週間でここを訪れた人間達が消息を断っていると言う噂を聞いた。間違い無く人体実験に使われて鬼と化した者達に襲われたんだろう」
「ここを訪れた?」 
「あるオカルト・サイトでここの事が掲載されていたからな、恐いもの見たさで近づいたって所だろう…… 良くある話だ」
 石動さんは吐き捨てた。
 ようするに大介の同類がたくさんいたって事か……
 僕も呆れて何も言えなくなった。
「その人達が連れて行かれたのは地下の施設だろう、どこかに地下に通じる道があるはずだ」
 石動さんは言った。
 確かに鬼は床の下から出てきた。
 普段は地下に隠れてるんだろう。
「さて、私はもう行くよ…… 君はもう帰りたまえ」
「えっ?」
「ここから先は私の仕事だ。君の友達は必ず救い出す、すでに協会に連絡を入れてあるから、君は森を出て……」
「待ってください!」
 僕は石動さんの会話を遮った。
 このまま引き返す事は出来なかった。
 僕1人なら確かに帰ったかもしれない、でもこの地下には美春ちゃんや大介がいる。
 僕は陰陽師にならないと言った。
 でも友達や恋人をほおって帰る事なんてとても出来なかった。
 僕はズボンのポケットからグローブを取り出すと石動さんの前で握りしめた。
「僕も…… 行きます! 皆…… 大事な人だから!」
 確かにまだ戸惑いはある。
 二度と戦わないって誓いを自分で破る事に抵抗はある、実際グローブを持つ手が震えていた。
 でも石動さんは何も聞き返さずに微笑しながら頷いてくれた。