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①銀の女王と金の太陽、星の空

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しばらく黙った太陽は、いきなり私の両肩を掴むと碧眼に力を込める。

「大丈夫だ。たとえ何があっても、僕が命を懸けて守る。」

その真剣な瞳に、私はゆっくりと頷いた。

「今日はどこに行くの?視察。」

私が笑顔で訊ねると、太陽もいつも通りの笑顔で答える。

「南の国境、と将軍から指示があった。」

「南の国境…。2年前に、反乱が起きて太陽が鎮圧したところだよね。」

太陽は表情を引き締めて、頷く。

「そうなんだ。なんでわざわざと思うけれど、将軍命令だから従うしかない。」

将軍は銀河の父、つまり私の父王の弟だ。

「大丈夫だよ、聖華。僕が守るから。」

輝く笑顔で太陽は、私の心の不安を明るく照らした。



視察の行程は、順調だった。

目的の南の国境に行くまでに、昨日の戴冠式を見に来ることができなかった人々が多く暮らす、王都から離れた町や村を通る。

その度に歓声が上がり、民が歓迎してくれていることを知ることができた。

視察だから、と太陽の提案で、護衛は50名の騎士で行われる。

歴代王に比べて少人数なので、民にも親しみを感じてもらえたようだ。

「もうすぐ南の国境の村だよ。」

太陽が笑顔で声を掛けてきた。

南の国境の村は、太陽が2年前、初めて軍を率いて鎮圧した場所だ。

ここはもともと歴史的にいつも覇権争いに巻き込まれてきた土地だが自治区としての歴史が古く、我が国の領土としてからも自治を許してきた。

そのためか、よく反乱が起きる。

この村民全員が特殊な訓練を受けていて、女子どもまでが少数精鋭の武力集団だそうで、2年前の鎮圧時は太陽はかなり苦戦したと聞いている。

そしてその時に、太陽は頭領ばかりでなく、女子どもも容赦なくなで斬りにしたと…。

(太陽に恨みが強いはずのこの地に、なぜ将軍は…。)

不安が過ったその時。

突然、獣の唸り声がして、護衛の騎士たちに襲いかかった。

隊列は一気に乱れ、即座に太陽の指示がとぶ。

「狼に怯むな!獣は火に弱い!火剣を抜け!隊列を整えろ!」

その指示で、皆いっせいに火剣を抜く。

火剣とは、鞘から抜くと剣の半分が火に覆われる我が国固有の武器だ。

すると太陽の指示通り、狼たちは唸りながら後ずさる。

「狼に襲われて怪我をした者は隊列内側、怪我をしていない者が外側を守備し、速やかにこの場を退避する!」

太陽の指揮は的確で落ち着いており、そのおかげで奇襲で乱れかかった隊もすぐに落ち着きを取り戻していた。

(すごいな、太陽。)

次期将軍と謳われる実力を初めて目の当たりにし、改めて尊敬した。

狼たちは、ゆっくりと退避する私たちをただジッと見つめるだけで追ってこない。

火剣の威力にホッとした、その時。

風を切る音がした。

その瞬間、私が乗っている馬車の右側が一気に燃え上がった。

「聖華!!」

太陽が馬車の左側の扉を開け、私を一気に引き寄せ、自分の馬上に抱え上げる。

「火矢だ!馬車の馬は外せ!女王を取り囲んで守れ!!」

騎士が集まり始めたその時、再び狼が襲いかかって来て、次々と近衛の騎士たちを馬上から落として行く。

そしてあっという間に太陽と私の回りががら空きになった時には、辺りは薄暗く闇に包まれようとしていた。