EMIRI どんなに素敵な昨日でも
昼休みの学食に向かう大勢の行列に混ざり、春樹はみのりと言葉少なに歩いていた。みのりは、(何か話題、話題)と考えながら。
「菅生さん。恵美莉の誕生日どうするか聞きました?」
「いや。聞いてないけど。誕生日近いの?」
「え? 今週ですよ」
「教えてもらってない。て言うか、聞かなかった俺が悪い」
「二十歳のバースデーなのに、言ってなかったのか」
「俺には言いたくないのかな?」
「違いますよ。恵美莉が遠慮がちな子なだけですよ」
「その日、何か予定入れてるかな?」
「分かりません。多分誘ってくれるの待ってるんじゃないですか?」
「誕生日、教えてくれてないのに?」
「もう、めんどくさいから、誘ってやって下さい。彼女絶対自分からは言わないですから。土曜日です」
学食に着くと、いつものとおりトレーを手に長い列に並ぶ。
「先週、恵美ちゃんにスペシャルおごってもらってから、もう一週間か。早いな」
「あ、そうかあの日。私がきっかけで知り合ったんですよね」
「そうだけど、それよりずっと前にも声かけたことあったんだ。彼女覚えてないみたいだけど」
「アプローチかけてたってことですか?」
「そこまでではないけど、ノッポの男がいたから」
二人はAランチをトレーに乗せて、窓際の席に向かった。小峠と佐々木がいつもの席に着いていた。
「川崎さんは?」
佐々木が聞いた。
「今日休みみたいだ」
春樹は皆と目を合わせずに答えた。
「何かフラれたみたいな顔してるぞ」
「バカ言うなよ」
春樹はようやく笑った。
作品名:EMIRI どんなに素敵な昨日でも 作家名:亨利(ヘンリー)