EMIRI どんなに素敵な昨日でも
エピローグ
翌日の午前中、恵美莉は授業に出席しなかった。みのりが連絡を取ろうとしたが、恵美莉のLINEは既読にならず。電話にも出ない。
(おかしい。恵美莉が経済学を休むなんて。唯一、菅生君と一緒の講座なのに)
「どうしたんだろ。恵美ちゃん、何かあったのかな?」
みのりの隣に座った春樹が心配そうに聞いた。
「さあ。菅生さんは何か聞いてないんですか?」
「俺が? 俺は知らないよ」
「恵美莉、菅生さんになら連絡してるかなって思ってたのに」
「まだ、そんな仲じゃないし」
「まだ!ってことは、そのうちにそんな仲になる気はあるんですよね?」
「うん、もうその気満々なんだけど、逆に俺のことどう言ってた?」
「そんなこと私に聞きます?」
「そりゃ自分で聞けってか。そうだよな。でも彼氏と別れてすぐなのに、しつこくし過ぎたのかな」
「そんなことは言ってませんでしたよ」
「ホント? じゃ、病気かな? 病院に行ってて電話に出られないのかも」
「それならLINEは出来ますよ。きっと寝坊ですよ」
その時、恵美莉は病院・・・ではなく、美容院にいた。鏡に映る自分の顔を見て、昨晩のことをつくづく後悔していた。
(あーあ、「先生、抱いてください」っか。よくそんなこと言っちゃったもんだな。軽い女に思われただろうな。何がクリームブリュレみたいな女よ。バカみたいあたし)
Boooooooooom・・・
(あ。またLINEだ)
恵美莉は、首から巻かれたケープの中でモゾモゾとしている。
「電話かけますか? さっきから鳴ってますよね」
美容師が気を効かせてくれた。
「いえ、誰からか分かってますから大丈夫です」
「じゃ、仕上げにブローしますね。前髪浮かせますか?」
「おでこ出そっかな」
「はい。じゃ、少し大きく分け目作りましょうか」
作品名:EMIRI どんなに素敵な昨日でも 作家名:亨利(ヘンリー)