EMIRI どんなに素敵な昨日でも
「そうか、人の相性もそんなものなのかな?」
「川崎さんは中学の時からずっと、同じ彼氏に慣れてしまってて、意外性のある交際をしたことがなかったんじゃない?」
「絶対そうだぁ」
「きっと心の奥底じゃ、刺激の無い毎日が安心だと思ってたけど、安心が無くなったとたんに刺激を求めてるんだよ」
「でも、相手と一対一なら安心して接することが出来るのに、大勢の中じゃ安心できないって言うか、思うように行動できないんです」
「それはよくあることで、自分中心に物事を進めたい人に多い傾向だよ」
「自己中ってこと?」
「そうかもね。でも皆にも気を使ってるから、思うように行動出来ない。今までは元カレがうまくやってくれてたんだと思うよ」
「はあ。ワインもっと飲んでいいですか?」
「ああ、いいよ。グラスそれでいい?」
「先生のグラスを新しいのもらいましょうか?」
「僕はカジキに合わなかったから、ビールにするよ。で、普段から男に接することには、何の抵抗も感じない?」
「はい。あまり緊張したり、変に意識するのは変かなって思うので、普通に接せます」
「そうか、じゃ、きっと元カレの友達に囲まれて男には慣れてるんだろうけど、一対一の場合は、元カレといるような感覚になってしまって、そこから抜け出せないんだね」
「あー、多分そうだと思います」
「今も結構、自然と言うか、自分を飾らないよね」
「だから、厚かましいだけだって言ってるじゃないですか」
「僕と二人でいても、元カレといる時の感覚のままそこに座ってるんじゃない?」
「!・・・そうかもしれません。菅生君と二人だった時も、そうでした」
「だから現実的な交際の話になると、元カレとの違いを無意識に感じてブレーキがかかる」
「ブレーキか。じゃ。どうしたら、素直に菅生君と付き合えると思いますか?」
「簡単じゃないか。ものすごく好きになるしかないよ」
「結構好きなはずなんだけどな」
「そんなに好きになってたの?」
「へへへ、まだ足りないってことかな」
「若しくは、思い切って付き合ってから、もっともっと好きになるってのは?」
「そっちにしようとして、できなくて困ってるんですよ」
作品名:EMIRI どんなに素敵な昨日でも 作家名:亨利(ヘンリー)