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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI どんなに素敵な昨日でも

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「あれ? ちょっとクセありますね」
と言って、動きを止める恵美莉。桧垣は少し慌てて、
「仔羊だからマシな方だと思うんだけど、無理だった?」
「いえ、無理って言うほどでは無いんですけど」
「カジキと交換しようか?」
「いいえ、全取っ替えは悪いんで。もう一本お願いできます? 二本は自分で頑張ります」
恵美莉がラムチョップのプレートを差し出すと、
「ああ、いいよ。じゃ、カジキももう少しどうぞ」
と言って、恵美莉のお皿に載せてから、ラムをもう一本取り上げた。
恵美莉は口直しにコーラを一口飲んで、
「ええ? 何これ全然合わない。コーラの匂いで余計に臭い」
「そうなの? それは知らなかった。赤ワインみたいにはいかないか」
「先生、ワイン一口ください」
強引にワイングラスに手を伸ばす恵美莉。「ダメ」と言いそうになったけど、桧垣はこの状況の未成年飲酒に、目を瞑ることにした。
 グビッと多めの一口を飲んだ恵美莉の方が、リアルに目を瞑って、初めての赤ワインを味わった。
「おいしい」
「ほらね」
「お肉の臭みに合う気がします。すごーい。ええー? どういうことだろ。ワイン自体はそんなには、おいしくないけど」
と言って桧垣をキラキラした笑顔で見つめると、
「その意外性が、“マリアージュ”と言うもんだよ」
「マリアージュ?」
「料理とワインの相性のこと」
「結婚式みたい」
「同じような事じゃない? 二つの相性がぴったり合うことだから」