EMIRI どんなに素敵な昨日でも
「なんか、食べづらい雰囲気だね。カジキ少しそっちに分けるよ」
「じゃ、ラムチョップ1本、はい」
互いのプレートに載せあった。
「カジキって何も味しませんね」
「本当だね。塩コショウだけみたいな」
「何かつまらないあたし、みたいな感じ」
「何言ってんの、君はもっと魅力的だよ」
恵美莉は少しニヤ付いた。
「でも、これは何かソースが欲しいところですね」
「あ、このサラダと一緒に食べたら、意外にドレッシングがバッチリ合うよ」
恵美莉も生ハムのサラダと一緒に食べてみた。
「あ、ホントだ。おいしい」
「でも、ワインは白にするべきだったかな」
桧垣は、ラムチョップの方に合わせて、赤ワインをハーフボトルで飲んでいた。
「じゃ、お羊さんはどうかな?」
「ははは。お羊さんって。川崎さん」
恵美莉は、ラムチョップをナイフとフォークで捌こうと思ったが、骨が邪魔でうまくいかない。
「ふふふ、手で持っていいよ。フライドチキンみたいに」
「え? ホントですか? こんな店でも手掴みOK?」
「問題ないよ」
「騙してません?」
「女の子騙したりしないよ」
「女の子騙すって、変に聞こえますよ」
「もう、パンだって手で食べてるじゃないか」
「そう言えばそうですね。当たり前過ぎて気付かなかった」
「個室だし、気にしないで」
「はい、じゃ」
(がぶり・・・もぐ・もぐ・・・)
「どう?」
作品名:EMIRI どんなに素敵な昨日でも 作家名:亨利(ヘンリー)