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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI どんなに素敵な昨日でも

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第1章: スペシャルランチ



 恵美莉には、女子友が少ない。別れた彼氏中心に生活してきたことで、男友達の方が多かったぐらい。それに男勝りな性格な上に、高校から始めた小説の執筆活動で、一人でいることも多かったから。でも、もう小説は書く気分じゃなくなってしまった。

「またすぐ新しい男見付けようよ」
 日曜日、腕を組んで歩く奈美が、恵美莉を励まそうとして言った。郵便局に勤める彼女とは小学校からの付き合いで、二人でよく買い物に街へ出ることが多い。

「そんな簡単に、気分転換できないわ」
「新しく付き合ってから、気分って変わるもんじゃないの?」
「無理無理」
「それ思い切って、小説のネタにしちゃいなよ」
「そんなに割り切って付き合えないって、あたし」
「やってみるしかないしね。恵美」
「でもねぇ・・・」
「颯ちゃん帰ってきたら、また付き合えるかもしれないけど、それ信じて待つ必要ないと思うよ」

 普段は、恵美莉の方が奈美の相談に乗ってやることがほとんどなのに、この時ばかりは、奈美もがんばった。でも恵美莉の長い髪をなでながら、在り来りの事しか言えない。それにこの日、恵美莉は何も買っていない。帽子を見ても、靴を見ても、ただただ颯介の好みを考えてしまうから。

 その帰りに、二人は『千石』に立ち寄った。そこは彼女らが通っていた高校の近くにある馴染みのお好み焼き屋である。
「私、いつものモダン焼き」
「あたしは二枚食べてやる」
そこで恵美莉は、ネギ焼きとモダン焼きを一人で食べて、ジンジャーハイボールを2杯飲んだ。お酒はあまり経験が無かったけど、やけ食いで無茶したかった。彼女なり、せめてものハメのはずし方だった。でも、付き合ってビールを飲んだ奈美は酔っ払ったのに、恵美莉は全然普段通りで、奈美を自宅まで送り届けてから帰った。