EMIRI どんなに素敵な昨日でも
そこに河辺みのりが、トレーを抱えて駆け寄ってきた。
「先輩、一緒に食べてもいいですか?」
「河辺。ああ、いいけど」
「お邪魔します。お友だち紹介してくださいよ」
みのりは正面の佐々木を見て言った。
「佐々木です」
「え? こいつ目当て?」
「そうじゃないですよ。私の連れが、そちらの菅生さんの知り合いなんです」
「連れって?」
そこへ遅れて、恵美莉が味噌汁をこぼさないようにトレーを慎重に運びながら、いそいそとやって来た。
「おう。川崎さん。今日も彼氏いないの?」
春樹が声をかけた。
「そんなこと放っといてくださいよ」
「恵美莉、彼氏と別れたとこなんです」
「ああ、そうだったの? ゴメン」
「実は私も別れたばっかりで・・・」
みのりは、ぬけぬけと言った。
「へへー。じゃ今日、皆でカラオケ行く?」
佐々木が声をかけると。
「え? カラオケ? 行きたいですぅ」
みのりは、ここぞとばかりに、最大級の笑顔を作って言った。
「ちょうど今、その話してたとこだから」
と、小峠が言うと、恵美莉は、髪を束ねながら口を開いた。
「男だけで行こうと思ってたんですか?」
「そうだけど、悪い?」
すぐに、春樹の突込みが入った。
「いえ、そう言う訳じゃないですけど」
「河辺は道場終わってからだからな」
「分ってますよ先輩。練習の後で皆で集合ですね」
「え? みのり、それまであたしはどうしてたら?」
「うーん? 菅生さんと一緒に時間潰してたらいいじゃない」
「ああ。いいよ。俺も一人で飯食ってよかなって、思ってたから」
「じゃ決定な。19時半にJOYで待ち合わせ」
とんとん拍子に話が進んでしまった。
(これって合コン?)
作品名:EMIRI どんなに素敵な昨日でも 作家名:亨利(ヘンリー)