聞く子の(むかしの)約束
私はビジネスでいろんなプロデュースをしてきた。世界を飛び回ることも多くなり、その中で自分に合った仕事を選べるようになっていった。そこそこの年収になり、高級外車を乗り回すようにもなれた。その原点は、キクちゃんの紳士教育の成せる業であったと今になって思う。
知子と結婚して、娘も一人いる。誰が見ても幸せな家庭を持っている。もちろん、もう浮気などしない。彼女と結婚する時に、そう心に決めていたからだ。それでキクちゃんから独立できたと思っていた。
しかしその後は、キクちゃんのことなど、まったく省みなくなって、その存在さえも忘れてしまっていた。
作品名:聞く子の(むかしの)約束 作家名:亨利(ヘンリー)