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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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聞く子の(むかしの)約束

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第1章 まさかの電話



 事務所の電話がけたたましく鳴った。
「ちょっと出てくれる?」
私は、総務の女性係長の西野に頼んだ。自分への電話だと分かっていたが、今は手を離すことができなかったから。

「部長、がんばって!」
「もう無理。やっぱり敵わない!」

「木田部長、マルケンの原田社長からですよ」

「ああ。もうやめておこう」
私は若い岩瀬の手を離した。腕相撲には自信あったけど、やっぱり若い子は持久力がある。長期戦になって、私にはもう勝つ要素はなくなっていた。

「はい、もしもし企画部の木田です。ああ原田さん、調子はどうですか・・・」

 私は毎日会社に来て、人とお金とスケジュールの管理をしているただの管理職だ。若い頃は、希望と言うより、野望に燃えていろんな仕事に手を出していたが、この仕事に落ち着いて、業績を伸ばして管理職になったものの、毎日がつまらなくて退屈だ。楽すぎるのだ。他の人とはバイタリティが違うのだと思うが、何をやってもやり足りない気がする。もっとできる。もっともっとできる。そう思って突き進んでも、付いて来られる社員が一人もいない。社員の機嫌取りに盛り上げ役になるのも、ほとほと疲れる。
 こんな毎日でいいのかなと、何か不安になることもある。

 食堂に続く長い廊下を歩いていると、携帯電話が鳴った。しかし、それはすぐに切れてしまった。多分、妻からだ。ワン切りして、都合のいい時にかけて来いの合図だろう。昼食後、事務所に戻ってから、椅子に深く腰掛けて、先ほどの電話にリダイヤルした。

「もしもし、どうした?」
「あなた、さっき大学から電話がありましたよ」
それを聞いて私は、ドキン! と心臓が大きく脈打った。
「え? 大学から? 何って?」
「森山さんと言う人に、折り返し電話が欲しいそうよ」
「え? 森山? 女の森山?」
部下の小原主任が、デスクでハンドクリームを塗りながら、聞き耳を立てているようだ。

「そう。知ってる人?」
「知ってるも何も、キクちゃんだよ」
「やっぱり。その人のことじゃないかと思いました」