聞く子の(むかしの)約束
第6章 昔の約束
白い鶏雑炊をすすりながら、
「ネットでキクちゃんのこと調べた後、同窓会名簿の住所変更をしたんですよ。親元から離れて、四回ぐらい引越ししてるのに、一度も変更申請してなかったから。逆にキクちゃんも調べてくれてるかなって思って。でもそれだけでは気付いてくれないかもしれないし、同窓会事務局から送られてきた書類を、わざと学生課に送ったりしてたんだけど」
「その書類は気付かなかったわ。そういうことよくあるから、もう機械的に処理されちゃうし」
「でも無駄じゃなかったんですよね?」
「実は私も卒業式の後、しばらく連絡待ってたんだけど来ないから、こっちから電話したこともあったのよ。でも、もう繋がらなくって」
「親も家売って、田舎に帰っちゃいましたからね」
「本籍地の電話番号も変わってたわよね」
「いや、それは変更無かったと思うけど」
「そっちにもかけたのに」
「じゃ、店の方に転送されたんですね。仕出料理屋してたから」
「そうか、私、気になってて、何年も卒業生名簿に住所変更されないか確認してたのよ」
「本当に? すごく気にしてくれてたんですね」
「うん。でもヒロ君のことだから、お尻叩かないと、なかなかやらない性格だって分ってたから」
「へへへ、ごめんなさい」
「でも卒業証明書取りに来た時に、やっと連絡先が分かって、これでまた連絡できると思ってたら、その電話番号もすぐ変更になったのよね? 嘘の電話番号かと思ったわ」
「ちょうどあの頃が最後の引越しだったんですよ。市外に出たんで、家の電話番号ごと変更になってしまって」
「ふーん。すれ違いばっかりね」
「そうですね。でも今回は会えましたよ」
「返送してきたアンケートメールに私のこと書いてくれてたから、事務員が気付いて報告くれたのよ」
「ええ、お世話になった職員さんの思い出を、感謝の言葉として、近況報告の欄に書いて正解でした」
「会おうと思えば、いつでも会えたって事よね」
「今まで何してたんだろって思いません?」
「本当にそうね」
作品名:聞く子の(むかしの)約束 作家名:亨利(ヘンリー)