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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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聞く子の(むかしの)約束

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「そう言えば、昔、100キロマラソン走ったでしょ。私あの時は、無茶するなぁって思ってたけど、翌年から走る学生を見て、ヒロ君もよく頑張ったんだなって、改めて思ったのよ」
 私はこの話題にハッとした。
「やっぱり、そうでしょ! あの時、かなり頑張ったのに、キクちゃん素っ気なかったよー」
そのことが、ずーっと心に引っかかっていたのに、実は感心してくれていたのか。
「だって、何のために走ったのか、意味解んなかったんだもの」
「キクちゃんに褒めてもらいたくて無理したの」
「あはは、それは、ごめんちゃい」
「あ、ごめんちゃい。出た!」
「え? 何のこと?」
「それって、キクちゃんが、一回だけ僕に謝った時のこと覚えてる?」
「えぇ? 私の友達と飲んだ時のことかな?」
「そう。その時、可愛い子ぶって、ごめんちゃいって」
「そうだったっけ? もう覚えてないよ」
「・・・・・・」
「どうしたの?」
「なんだか涙が出そうで」
「もう、やめてよ」
「いろんなことがあったのに、僕、ほとんど忘れてたんです」
「私も大分忘れたわよ」
「そうじゃなくって、キクちゃんには人生で一番って言うほど感謝しないといけなかったのに、キクちゃんのことを忘れようして、無理やり記憶を封印したんだと思う」
「それ大げさよ」
「ううん。本当にごめん。最初は連絡しようと思ってたのに、時間が経つに連れて、今更何の為にとか思っちゃって、キクちゃんには申し訳なくって、考えないようにしてたら、本当に忘れてしまって・・・」
「私も連絡できたのにしなかったのよ。お互い様じゃない」
「そんなこと・・・」
「じゃ、今回私が連絡したの迷惑だった?」
「いいえ。そんなことないよ。だって連絡してくるように仕向けたんだから」
「どういう意味よ」
「去年、キクちゃんのことを急に思い出して、考えてるうちに居ても立ってもいられなくなったんだけど、まさか大学に顔を出して会いに行く訳にもいかないし」
「来てもいいわよ」
「10年ぐらい前に、卒業証明取りに行った時、待っててくれたんでしょ? 僕、すごく気まずかったもん」
「何言ってんのよ。私はどれだけ嬉しかったことか」
「僕は申し訳なかったな。何か心の準備ができてない状態だったから」
「ふうん」