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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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ファイト!ライダー!

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 ジョアキムは演奏を一度やめ、そのすぐあとにカウントを始めた。「Φ」の一番人気ナンバー、「SPOUT」だ。ティミーは、楽器隊がつくり出すビートとメロディーの波に乗り、パワフルな高音の歌声を惜しみなく発揮する。30年近く前と変わらぬ激しいパフォーマンスは、デビュー当時からのファンの心も、比較的若いファンの心も酔わせている。どんなに強い酒よりも。ライダーたちも、少々激しすぎる音楽をバックに、ファンや「Φ」の面々に迷惑が掛からないよう細心の注意を払いつつ、ショッカーたちを蹴散らしていく。

 一方、いつの間にか起き上がったカラス女が、一層恐ろしい目つきでジョアキムをにらみ、再び空中を移動し、彼の前に立ちふさがった。そしてドラムセットもろとも彼を蹴りつぶそうと美脚(!)を振り上げたそのとき、レディ9の投げた鋭いクナイが、見事に彼女の脚に命中した。美怪人は、本物のカラスのような叫びを上げ、派手に倒れた。すかさず、正義のくノ一は怪人を取り押さえ、一撃の手刀を食らわせた。レディ9は、ジョアキムと視線を合わせてうなずいた。ステージ上のごたごたにもかかわらず、偉大なドラマーは、神懸かったように正確で素早いビートを刻み続ける。


 こうして、ショッカーの一団を倒したライダーたちは、曲が終わるとともに、悪者どもを「回収」しつつ、手を振りながら去って行った。オーディエンスの歓声は、これまでのライブ以上に大きかった。ティミーも、
「Thank You!!!」
 と心からの、体からの感謝の言葉をライダーたちとオーディエンスに送った。そのあとも、涙なしでは聞けないバラード「Endless Sorrow」やハードナンバー「Kiss or Die」など、名曲の数々を歌い上げ、大盛況のうちにライブは終わった。

     ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

 バックステージで、カナダの大御所ロックバンド「Φ」と、日本が誇るヒーロー集団、ライダーチームが対面している。ジョアキムはサングラスを外し、
「本当に、言葉にならない感謝の気持ちでいっぱいだ」
 と言うと、ライダーこと一文字隼人と固い握手をした。
「いや、天下の『Φ』のライブを横取りしてしまったに等しい」
 結城丈二も付け足すように言った。
「ファンの中には、今回のことがトラウマになった者も居るかもしれない」
 すると、ティミーが答えた。
「いや、あなたたちに責任はないよ。そのうえ奇跡的にも、ファンやスタッフにはけが人1人出なかったようだしね」
 彼の言葉を一文字に通訳してもらい、剛は日本語で話した。
「それを聞いて、少しホッとしたぜ」
 今度は、アミアンがフランス語で言った。
「あなたたちには、何かしら感謝の気持ちをかたちにしたい」(注:作者訳)
 それには、一文字が流暢なフランス語で答えた。
「いいや、われわれは当然の行動を取っただけで…」(注:作者訳)
 そのとき、ティミーがジョアキムに何かを伝え、彼はスタッフの1人を呼び、あることを頼んだ。ほどなく、そのスタッフは一封の封筒を持って戻ってきた。
「ささやかだけれど、お礼にこれをあげよう」
 ジョアキムは、一文字にその封筒を渡した。
「中身は、帰ってから見てほしい」

 そのあと、それぞれのチームのメンバーがお互いに握手を交わした。