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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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ファイト!ライダー!

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2017年、ゴールデンウイークのある日のこと。ライダーチームも一文字隼人と結城丈二とおやっさんこと立花藤兵衛はそろって外出、納谷剛と志のぶ夫妻は何とカナダの超大物ロックバンド「Φ」(ファイ)の日本武○館ライブを見に行っているのだ。というのも、実は納谷剛は10代のときから「Φ」の大ファン。今回は妻・志のぶの助けを借りて、ライブのチケットを奇跡的に入手できたのだ。

 「Φ」のライブはもうすごい熱狂の嵐で、30年を超えるキャリアを有するステージ上のメンバーたちは、観客を沸きに沸かせるパフォーマンスを展開させる。剛は歌詞の意味こそ分からずとも、曲の数々のノリの良さが大好きで、他の観客と一緒にノリノリになり、ビートを惜しみなく利かせ、なおかつ正確なドラムプレーを披露するドラマーのジョアキムの名前を何度も叫んでいる。志のぶは「Φ」を名前しか知らなかったが、ネット上で幾つも動画を見てライブの予習をしてきたので、ギタリストのアミアンの名前を、いつになく甲高い声で何度も呼びながらライブを楽しんだ。
「何か、外国のバンドのライブって、生で見るとすごいわよね!」
 彼女は、隣に居る夫に話しかけた。
「そうだろ!この方たちはとにかくスゲーんだ!」

    ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
             
 彼らの代表曲「SPOUT」がサビに入り、ステージも客席も最強クラスに盛り上がったとき、まねかれざる客が乱入した。ステージの裏から、目出し全身黒タイツを着た男たちが、ステージに現れた。ショッカー戦闘員だ。ざっと見積もっても20人は居そうだ。「Φ」の面々は、突然の事態に演奏をストップさせ、細かく震えながら立っていた。しかし、リーダーのジョアキムは、恐れた様子はなく、乱入者どもをじっと見つめていた。
「こんな素晴らしいライブだってのに、ショッカーかよ!」
 剛は一文字と結城に、志のぶは安倍晴子に連絡した。

 一方、観客たちは瞬時にどよめき、頭を抱えてしゃがみ込む者まで現れた。彼らの暴挙はそれだけにとどまらない。体のラインを強調する黒レザーの衣装をまとい、鳥のくちばしのように先のとがった黒いマスクを着用した、目力ありまくりの黒い長髪の女が、ピーターパンよりも自在に空中を移動し、ステージに降り立った。そしてヴォーカルのティミーに近寄ると、長い脚で彼のすねをひと蹴りしてマイクを奪い、勇猛でサディスティックな声を響かせた。
「この日本武○館は、われわれショッカーが占領した!ここからはこの私、カラス女のステージだよ!」
 突然の悪の軍団の来襲に、観客たちはわれ先にと出口に殺到した。それにもたじろがず、剛は仮面ライダーマッスルに、志のぶはレディ9に変身した。

 カラス女はベースのパトリックとエクトールのすねも蹴り、アミアンも同じ目に遭わせた。すかさず、戦闘員たちが動けなくなったヴォーカリスト、ギタリスト、2人のベーシストを押さえ付け、完全に人質同然にした。最後の1人、リーダーのジョアキムにも攻撃しようと近寄ったとき、信じられないことが起こった。

     ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

 ジョアキムは、カラス女と取り巻きの戦闘員をひとにらみすると、静かに、しかし怒りを込めて口を開いた。
「邪魔をするな」
 その瞬間、戦闘員どもは体に激しいしびれを感じ、へなへなとその場で気絶した。カラス女もおびえたような顔になり、立ち尽くした。そればかりではない。他のメンバーを取り押さえていた戦闘員たちも、ぶるぶる震えだし、次々と気絶した。この奇妙な光景に、マッスルもレディ9も目を丸くした。
「何だ!?戦闘員どもがぶっ倒れたぞ?」
「カラス女も動かなくなったわ。ジョアキムさん、いったい何をやったのかしら…」
 しかし、ジョアキムは民間人なので、このまま危険にさらすことはできない。マッスルとレディ9は、全速力でステージのほうへと走った。

 カラス女は、彼らが近付いてくるのに気付くと、さっと空を飛んで客席の端に移動した。
「逃げたのか?」
「いいえ、そうでもなさそうよ」
 レディ9の言うとおりだった。カラス女は東2階席の手すりに立ち、悪魔にも似た真黒な翼を広げた。
「私の技は、何もすね蹴りだけじゃないのさ。人間ども、聞け!私の歌声を!」
 そう言うと、軽く飛び上がり、某国民的マンガに登場する「あのガキ大将」のような破壊的な歌声を響かせながら、客席やステージを飛び回った。
「あたし〜は〜カラス女〜♪美悪女だ〜♪」
 カラス何十羽分の彼女の歌声に、会場じゅうの人間が耳をふさぎ、苦しそうに叫んだ。あのジョアキムも、耳をふさいで震えている。

 このままではショッカーの思いどおりになってしまう…。マッスルとレディ9がそう感じたときだった。「Φ」のリーダー・ジョアキムは、さっと背筋を伸ばすとドラムセットまで歩き出した。そして、ドラムスティックを両手に持つと、ダガドン!と力強いドラム音を響かせ、ドラム演奏を始めた。そのとき、空中に居たカラス女は飛翔コントロールができなくなって空中でもがき、アリーナ席のど真ん中に落下した。

 それからまさに「間髪を入れず」というタイミングで、舞台の袖からライダーとライダーマン、そしてアベノセイコが颯爽と現れた。目を覚ました戦闘員たちは、突然やってきた彼らの姿を見てたじろいだ。ジョアキム以外のメンバーは何が起こっているのか分からず、呆然と見つめていた。パワフルかつスピーディーなドラム演奏が流れる中、ライダーはヴォーカルのティミーに近付くと、耳元で言った。
「ご覧ください。ジョアキム・ウッドは、やつらの暴挙にも負けず、来てくれたファンのためにパフォーマンスを見せている。あなた方も、やつらに屈しない心意気を見せてくれませんか」
 ティミーは、会ったことのない仮面の男に何も答えられなかった。そんな彼をよそに、ライダーマンとアベノセイコは観客たちのほうを向き、よく通る声で
「We Are Φ!」
 と連呼した。ライダーとライダーマンのコールに、ファンたちの
「We Are Φ!」
 コールも次第に大きくなっていった。彼らの声を聞くうちに、ティミーたちもほほ笑みを浮かべてメンバーとうなずき合い、それぞれの楽器を手にもとのポジションに移った。観客席のファンたちは、カムバックした「Φ」に割れんばかりの大歓声を送った。
「すげえ!『Φ』と仮面ライダー、豪華すぎるぜ、このコラボ!」
「力をクロスさせて、変な軍団なんざぶっつぶしちまえ!」
「『Φ』の音楽の力を見せつけて!」