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　2人でそんなやりとりをしていると、ヒロタナツハが、彼らのそばで立ち止まった。
「ヤスキくん」
　名前を呼ばれたヤスキは、彼女のほうを見た。
「あ、ナツハ」
　アヤセも、彼女の姿を認識すると、穏やかな顔で会釈した。
「どうも」
「こちらの男性は？」
　彼女が尋ねると、ヤスキは答えた。
「あぁ、彼は、イヌイアヤセくん。アコギがすっごく上手なんだ」
　ヤスキに褒められ、アヤセが肩をすくめてはにかむ。
「まあ、アコースティックギターをねぇ」
　そう言うと、ナツハもアヤセに近寄って腰を下ろし、彼の顔を見て、興味深そうに言った。
「私もぜひ聞きたいわ。あなたのギターを」
「あ、いいですよ。…では、お聞きください」

　アヤセは再びギターを肩に掛けると、演奏を始めた。今度は、先ほどのバラードよりスローテンポのけだるい、いや、しっとりしたバラードナンバーだ。この曲はナツハもヤスキも初めて聞く曲なので、ただうなずくように軽く頭を振りながら聞いていた。この曲に歌詞が付いてたら、どれほど切ない系のものか、と想像してしまうほどである。


　演奏が終わると、聞いていた2人は惜しみない拍手を彼に送った。アヤセも笑みを見せて
「ありがとう」
　という感謝の言葉とともに、ナツハとヤスキのそれぞれと握手を交わした。