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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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目的地の現在(いま)

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「常春」、まさにこの言葉がぴったりの暖かく明るい地で、サカイヤスキはぼんやりと宙を眺めていた。
 しばらくすると、聞くだけでほっとするような、穏やかで印象的なギターアルペジオが聞こえてきた。音のするほうを向くと、整った顔立ちの、20代前半と思われる青年が、椅子のようなものに座ってアコースティックギターを弾いている。ヤスキは、ギターを演奏する彼の姿に強く惹かれ、しばし彼の演奏を聞いていた。しかも、自分の好きなバラードナンバーなので、控えめな声で歌詞を口ずさんだ。

 イントロと同じくらいに印象的なメロディーで演奏を終えると、青年の視線の先にヤスキが見えた。彼は、演奏者に拍手を送った。青年は軽く照れ笑いをすると、
「聞いてたんですね」
 と言った。ヤスキは彼のそばに移動してその隣にしゃがんだ。
「君、ギター上手だね」
「ありがとうございます」
 彼は、先ほどよりもうれしそうな顔で言った。ヤスキは話を続ける。
「さっき君が弾いた曲、俺、すっごい好きなんだ」
「そうなんですね」
「うん。ところで君、何年ギターやってるの?」
 青年は、さらりと答えた。
「えっと、8年ぐらいですかね」
「へえ、随分長くやってんだね」
「はい、まあ…」
 その直後、しばらく沈黙が続いたが、ヤスキと青年は、同じ方向を見つめていた。

 「あ、俺、サカイヤスキって言うんだ。君の名前、まだ聞いてなかったね。聞いてもいい?」
 ヤスキが、沈黙を破った。
「あ、イヌイアヤセと言います」
「イヌイアヤセ。すごい、何かアニメに出てきそうな、格好いい名前だね」
「そうですか?」
 イヌイアヤセと名乗るこのギター青年は、軽く笑った。