僕らの再出発
Jimmy Side
バンドのリーダーの突然の死をきっかけに、自分の中でも何かが音を立てて崩れた。このまま生きてたって、夢を粉々にされた自分には、もう目的はない…。だったら、向こうでまたあいつと音楽やろう、そう思って、
「俺はおまえに会いに行くよ!」
と叫んで、とある建物の3階から飛び降りた。
……でも、どうしたわけか、自分は死ねなかった。あとで聞いた話によると、自分が落下して30秒とたたないうちに、通行人が自分を見かけて、救急車を呼んだらしいんだ。それで、命が助かったってわけ。
自分は、病院で意識を取り戻した。でも、何かがおかしかった。自分の体の左半分が、全っ然動かなかったんだ。力込めて動かそうとすると、声を上げるくらいの痛みが全身を走った。こんな体じゃ、もう完全に音楽はできないし、趣味の写真も撮れない…。そんな諦めが、自分の中にあった。
あと、つらかったのは、お見舞いに来る人が、父母のほかにはほとんど居なかったことだ。ただ、リーダーの奥さんが自分を訪ねてきてくれたことがあったんだ。そのとき、ご主人のことに対する感謝と、関係者の近況を語ったっけな。そして、スティーブにその小さな手を、こっちの手のひらに重ねさせたんだ。そのとき、自分は笑ったと同時に、涙が出た。あのとき持った感情は、今でも鮮烈に覚えてるよ。あの坊や、きっと父母のいいとこ取りした、申し分ない子に育つだろうね。
…ごめん、何か自分の感情に任せて語っちゃった。とにかく、自分は一人じゃないと分かった。