僕らの再出発
あれは確か、4月の頭だった。TELをしてきたのは、フィル・イェーツだった。
「やあ、ヒューゴ。久しぶり」
俺は、体が震えた。
「……おまえ、俺に何か用か」
「聞いてよ、ヒューゴ。僕ね、しばらくソロ活動して、今年の7月をめどに、ジョアキムさんのプロデュースでメジャーデビューするんだ」
「……そうか。それはすごいな」
「でね、彼と話し合って、君とジミーを僕のサポートミュージシャンに決めたんだ」
「……!?俺を?」
「うん。ジョアキムさんも言ってた。『フィルと音楽ができるのは、彼らしか居ない』って」
この発言を聞いて、俺の心と体、そして目頭が急速に熱くなっていくのを感じた。いっときとはいえ、音楽を捨てた自分がひどく恥ずかしく思えた。
「…フィル、俺、もう一度、音楽やるぜ」
俺もしゃべりの終わりに、声まで震えた。
「うんっ!ヒューゴらしくやってよ。そして、僕たちが受け継ごう、彼の夢を!」
「ああ、そのつもりだ」
俺は、濡れた目をして笑みを見せた。