僕らの再出発
Hugo Side
あいつが死んでから、俺は何日も酒に溺れてた。ひどいときには床に座り込んで、シャワーを浴びるみたいに酒を頭にぶっかけて、床をびちゃびちゃにしたくらいだ。ずうずうしく俺の部屋に居着いてるピッパも、俺のそんななりを見て随分おびえてた。俺にとって「音楽をやること」イコール「『LOVE BRAVE』をやること」であって、それを木っ端微塵なまでに壊され、生きる意味すら分からなくなっちまった。2カ月ぐらい前、俺が
「もう『LOVE BRAVE』はできないから、音楽をやめる」
みたいなことを言ったとき、ピッパが
「だったら、ピッパがヴォーカルになるから、ユニット組んでデビューしない?」
なんておかしなことを言いやがって、俺は真っ向から否定した。
「できるわけねえだろ、まともに人前で歌ってもいねえくせに!」
で、そいつと激しくもめて、ついにあいつは
「音楽やらない腰抜けヒューゴなんて、ピッパの王子様じゃない!!」
なんて捨てゼリフ吐いて、荷物を全部持って俺の部屋を去っていった。
俺はというと、完全に音楽と決別したくて、ギターを1台床にたたきつけて、真っ二つにした。その頃には、もう仲間たちの顔を見ることもなくなった。
そのあとは、生きてくためにレンタルビデオ屋とか、ガスステーション(いわゆるガソリンスタンド)でパートタイムジョブをしていた。仕事を終わらせうちに帰っても、何かむなしく、何の刺激もない日が続いた。
そんなある日、俺にかかってきた一本の電話で、俺の運命は想像もしなかった方向に動いた。