僕らの再出発
話は少しそれますが、3月の末ごろ、サラが僕の家を訪ねてきました。会ったのは親友の葬儀以来だったので、彼女の姿を見るや涙があふれました。僕は、彼女に謝罪しました。事故の場に居ながら、最善の対応をしなかった僕にも一部責任があると感じていたからです。すると、彼女は僕に全く非はないと言いました。彼女の言葉を聞いて、僕の胸から苦しみが取れた気がしました。そのあと、僕がした不思議な体験の話をして、最後に、親友からの「永遠に愛している」という妻子へのメッセージを伝えました。若い母親は、小さなスティーブに何度もほおずりをしてしばらく泣いていました。
やがて親友の妻は、別の話題を持ってきました。少し前、加害者女性のもとを訪れ、彼女を恨むのをやめたことを伝えた、というものでした。それを聞いて、僕はあのとき、親友が加害者に、「立ち直ってほしい」というメッセージを僕に託したことを思い出しました。許す心は、遺族にも受け継がれていたのです。僕もいつかまた彼女に会ったら、必ずあのメッセージを伝えよう、そう決めました。彼が僕の親友であって本当によかった、心からそう思いました。
その後、僕はもう一度ジョアキムさんと相談をして、ソロでインディーズ活動し、今年の7月ぐらいにメジャーデビューすることになりました。
(君が居なくても、僕は大好きな音楽で活躍する。そして、君が目指していた「ブレないミュージシャン」になるからな)
心の中で彼とそう約束しました。