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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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黄泉明りの落し子 狩人と少年

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 次の日の朝、彼は姿を消していた。
 更に歩いた先で、ブラッツェの鞄を見つけた。
 何が起きたかを察するのは、容易であった。抵抗の跡は、全くなかった。

 ピクシはその鞄の横に、黒い犬を見出した。
 ブラッツェの猟犬、アボロを。
 忠実なる友は、主人を悼むかのように、短く吠えた。
 そして森の奥深くへと、消えて行った。

 ピクシはしばらくの間、茫然と立ち尽くしていた。
 やがて、歩きだした。夜を迎えるまで、無表情を通り越した虚無を面に湛えて。

 そうして迎えた夜は、孤独だった。彼は、焚き火を炊くことももはやなく、申し訳程度に食事をし、申し訳程度の睡眠のために、寝袋に入った。
 彼は一人だった。彼を守るものは何一つなかった。彼を導くものはなかった。静かに、嗚咽を始めた。疲れと睡魔が、彼の体を支配するその時まで、それは続いた。

 そうして目覚めた朝に、何かを失うことはなかった。
 彼は虚ろだった。生きていたが、死んでいた。
 彼はその日も、歩き続けた。
 もはや、花や植物を打ち払うこともなかった。進むためだけに、進んでいた。