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遊遊快適

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突然の訪問者である男性から『ハッチ』と呼ばれたこの部屋の住人である女性。
一之瀬ハヅキは、独身OLで三十路も半ばを過ぎていた。二十代の恋愛で結婚目前に、相手の男性とのトラブルで白紙となってからは、仕事とこの独人の空間と時々やってくるこの男性との束の間の恋愛もどきを楽しんでいた。
そのやや図々しくもある男性、賀門 充(がもんみつる)とは 以前勤めていた会社の社内親睦会で知り合った。

当時、賀門充は、四十歳を迎えたサラリーマン。
システムを請け負う仕事柄、社内での仕事よりも出先が主な仕事場だった。
その所為ではないと彼自身は思っているようだが、女性の存在が点々と……。
籍は入っていないとはいえ、事実婚の女性がいる。
それにも関わらずハズキと付き合っているというなら 浮気や不倫と言えなくもないだろうが、賀門には、ハズキの他にも交際している女性たちがいた。
そして、賀門の同居している女性は、それを黙認しているのだ。

二股 三股……
世が世ならば、正室となる女性と側室にあたる女性たちという相関絵図も描かれそうなもの。お渡りの部屋の数も男冥利の甲斐性といえるだろう。
しかし、現代においては、異性との付き合いを股で表すのも可笑しな数えられ方ではないだろうか。
人一人に 股は一部しかないのに 幾つもの股をかけるのはタコかイカにしかできない芸当。冒険家が「七つの海を股にかけて」という世界的に影響をもたらす行動をするさま、その大きく構えた喩えとは違うものだ。
とはいえ、様々な場所で活躍しているさまの意味となると 相通ずるところがないわけでもなさそうだ。

作品名:遊遊快適 作家名:甜茶