カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅶ
「ああ、噂と言えば」
穏やかならぬ回想を止めたのは、佐伯の声だった。
「日垣1佐。全く別件ですが、妙な噂を聞いたんですがね」
「噂?」
日垣が応じると、高峰と宮崎も話に入ってきた。
「ああ私も、伺わなければと思っていたんですよ」
「それ、先週から出回ってる話ですよね。日垣1佐が……」
八嶋香織と廊下で……。十日ほど前にエレベーターホールの近くで目撃した二人の姿が、あの時に背筋を伝った嫌な感覚が、美紗の頭の中に、にわかに蘇った。
作品名:カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅶ 作家名:弦巻 耀