赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 26話から30話
『当たり前だろう。
お前ってやつは、手加減の出来ない不器用な女だからな。
本気でやられたら、月はおろか、火星か木星あたりまで投げ飛ばされちまう。
ふん。いろいろあるが、今日のところはこれくらいで勘弁してやる。
このあたりでとりあえず、停戦といこうぜ』
『いいわよ。私はたまほど発情している訳ではないもの。うふふ』
『ところでよぉ清子。あ、いや。今は市花(いちか)か。
あっちで2人がさっきから、半玉を作るのが楽しみだとヒソヒソ
やっているぞ。
半玉ってやつは、作りあげる代物なのか?』
『どうなるのか、ウチにも、さっぱりわからん。
今夜は6時にお座敷に入るので、その時間にあわせて作ってくれると
言ってます。
お風呂に入り、全身を丁寧に磨いておけと、念を押されました』
『何時頃のことだ。それは?』
『2時間前までに済ませておけって。あっ、もう4時を過ぎてるやないの。
たまが余計なことばかりを言うから、すっかり出遅れている状態や。
急いで風呂に入らんと、小春姐さんに本気でまた、
どやされてしまいます!』
『そらいかん。
おいらが背中を流してやるから、急いで風呂へ入ろうぜ!』
『たまとは、もう、入らん』
『なんでや。この間までは一緒に入ったやないか。別に問題はないやろ』
『ウチにも、都合というものがある』
『都合?。ははぁ、
さてはお前。あそこに、ようやく毛が生えてきたか?』
『好かん!。また余計なことを言う、たま。おまえときたら!。
私はこれからお風呂へ行くが、お前がこれから飛んでいくのは冥王星か
それとも、宇宙の果ての海王星の方角か。どっちや!。
どっちでもいいから、好きな方を選べ。
私が渾身の力で放り投げてあげるから。覚悟しいや、たまっ!』
『うわっ、かなわん。わ、わかった。
やっぱり、口は災いの元や。堪忍、堪忍やでぇ。清子~
ムキになるところを見ると、やっぱり、お前、あそこに毛が生えて・・・・』
たまが次ぎの言葉を言う前に、清子の強烈な右ストレートが
顔面に伸びてきた。
『へへん。すでに読んでおるわい。お前の攻撃など。当たるかい、
そんなパンチ』たまが軽くヒョイと身をひるがえす。
だがその瞬間。狙いすました清子の平手打ちが、反対方向から、
たまの横顔を的確に、バチーンと捉える。
『未熟者め。お前の逃げ方は常にワンパーターンや。
今日もウチの勝ちや。思い知ったか、この単細胞。うっふっふ』
(28)へ、つづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 26話から30話 作家名:落合順平