赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 26話から30話
『あいたたた。まったく・・・やることが乱暴すぎるぜ、清子ときたら。
猫の髭には、たくさんの神経が集中しているんだ。
微妙な振動を敏感に感じとる、高性能のレーダーだぞ。
そいつを、つまんで引っ張りあげるとは、乱暴するにもほどがある。
お前はいったい、どういう神経をしているんだ!』
解放されたたまが、清子を涙目で見上げる。
『ふん。まだ子猫のくせに、生意気な口をあたしにきくからさ。
寂しそうでかわいそうだから、だまって懐に入れてあげていたけど、
そういう事なら、もう、面倒なんか絶対に見てあげません!』
フン、とたまの目線を外した清子が、『好きにしなさい』と
そっぽを向いてしまう。
『そう言うなよ清子。お前だって本当は、寂しいだろう?』
『何言ってんのよ。あたしは、寂しくなんかないわ』
『そうかぁ。じゃ余計な心配かぁ。
お前くらいの年頃は、ホームシックにかかると聞いたぞ。
おふくろさんが恋しくなって、メソメソ泣くそうだ。
お前。本当に大丈夫か?
寂しいのなら、今夜は、俺が慰めてやってもいいぞ』
『あら。なかなか言ってくれるわねぇ。たま。
じゃ聞くけど。どんなふうにして、あたしを慰めてくれるのさ。
言ってごらんよ』
『方法はいろいろ有る。
そうだなぁ。まず、耳元で一晩中、愛の言葉を囁く。
胸のふくらみを、おいらのザラザラした舌で一晩中、舐めてやる。
両足のあいだに潜り込んで、一晩中、お前を温めてやる。
この3つのうち、1つだけ選択しろ。
なんなら、全部まとめてでもおいらは、一向にかまわないぜ』
『この、ド変態子猫。
あんたときたら妄想に、限度というものがありません。
いい加減にしないと、見せしめのために、尻尾を掴んで振り回し、
月の遥か彼方の世界まで、思いっきり、投げ飛ばしてあげようか』
『あっ。待っ、待て。それだけはよせ。
誰にでも愛想よく振っているだけの犬の尻尾と大違いで、猫のしっぽには、
大きな役割がある。
バランスをとるために欠かせないし、尻尾を強引に引っ張ると
内蔵に障害を起こしたり、脊髄に損傷を起こして下肢(後ろ足)に障害が
発生することもある。
そ、それだけは、頼むからやめてくれ!』
『うふふ。顔色が変わったね、たま。少しは反省したみたいだわね』
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 26話から30話 作家名:落合順平