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海だ! ライダー!(前・後編)(われらの! ライダー!)

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2. 後編



(後編)

(注)
 夢を壊すようで申し訳ないが、『海底2万マイル』のライドである小型潜水艇は水中を進んではいない、二重構造になっている窓の間に水が入っていて、気泡を出して水中に見せかけているのだ。



「いたぞ! あそこだ!」
 クラーケンは一台のライドを掴んで振り回している。
「予想以上に大きいな」
「だが、物理的攻撃で倒せるとわかってるんだ! 一刻の猶予もならない状況だろう?」
 マッスルが真っ先にクラーケンに飛びかかると、クラーケンはライドを離し、マッスルにその触手を巻きつけて投げ飛ばしてしまう。
「大丈夫か? マッスル」
「なんてことねぇよ、だが、ヌルヌルしててどうにも掴み難い、そのくせ吸盤を使ってこっちを掴むのは自在みたいだ」
「ならば私に任せてくれ! とおっ! ライダー・キック! 何っ?」
 ライダーの必殺技、ライダーキックを受けたクラーケンは一瞬たじろいだものの、触手を振り回してライダーを床に叩き付けた。
「ライダー!」
「大丈夫だ、しかしこいつ、ぐにゃぐにゃしていてキックの威力が吸い取られるようだ」
「しかし妙だな」
「ライダーマン、どういうことだ?」
「これがダイオウイカだとすれば、深海に生息する生き物、陸上で生きていられるとは思えない」
「それ以前にこんなデカイ奴をどうやってここに連れてこられたのかわからねぇよ」


「クラーケンは最初から大きかったわけじゃない!」
 追いついて来た晴子が叫んだ。
「つまり……やっぱりドゥーマンか?」
「違う……ドゥーマンの道力は確かに封じたわ、それに、この『気』は陰陽師のものじゃない」
「だったらいったい誰なんだ?」

「ワハハハハハ」
 その時、高笑いが響いた。
「だれなの!?」
「ワシか? 誰だと思う?」
「知らないわ、変な中国人にしか見えない」
「無礼な! ワシは、かのフー・マンチューの弟子、フー・マンジュー様よ!」
「Who・饅頭?」
「違う! カタカナでフー・マンジューだ、まぁ、この近くで食ったギョーザ・ドッグはなかなかだったが……あれは饅頭と呼ぶべきではないかな?」
「ああ、確かにアレはいいな」
 マッスルが思わず同意する。
「ほう、意見が合うな、デカいの」
「お前もかなりデカイじゃないか、もっとも、横にもでかいがな」
 フー・マンチューは痩躯で知られているが、フー・マンジューは服装や泥鰌髯こそフー・マンチューと同じだがかなりの肥満体だ。
「確かにWho・饅頭って名前の方が似合うぜ」
「フフフ、そうやって人を小バカにしていられるのも今の内だけだ、このクラーケンはワシがここに持ち込んで、魔術によって巨大化させたのだ」
「やっぱり……」
「おい、小娘、貴様にはどうも妙な『気』を感じるな、貴様がアシャード・ドーマンから道力を奪ったと言う陰陽師か?」
「いかにもそうよ!」
「ほう、それは興味深い、陰陽師ならこのクラーケンを操ることもできるのではないかな? ん? どうだ?」
「く……」
「ワハハ、どうやら出来ぬらしいな、ワシの魔術が勝っているとみえる、クラーケン、思う存分暴れるが良い! こやつらを叩き潰せ、そしてワシが死神や地獄大使に代わってショッカー極東支部の大幹部になるのだ!」
「ごめんなさい……フー・マンジューの魔術がどういうものかわかれば対処もできると思うんだけど……」
「いいんだよ、晴子ちゃん、この危機を察知してくれたことで充分さ、このバケモノは俺達で倒す」
「待って、ここは私に任せて」
 割って入ったのはレディ9だ。
「ひとつ考えがあるの」
「危険はないんだろうな」
 マッスルは常に愛妻の身を案じている。
「大丈夫、上手くやるわ、私だってチームの一員、信用して欲しいわ……この中では私が一番敏捷よ、クラーケンを困らせてやるから見てて!」
 そう叫ぶと、レディ9はクラーケンに向かって走り出した。
「「「無茶だ……」」」
 三人ライダーはそう思ったが、レディ9の敏捷性は以前にも増してアップしていた。
「こっちよ! ほらほら! どこを狙ってるの? 今度はこっちよ! 私の動きについてこられるかしら?」
 レディ9はクラーケンの触手の間をすり抜けるように走り回る、それを追うように触手を伸ばすがレディ9はすんでの所でそれをかわしては走り回る。

「ああっ、クラーケン、むきになるな!」
 レディ9の意図を察したフー・マンジューはクラーケンに向かって叫ぶが、元より知能の高い生物ではない。
「このバカ者め! 魚河岸に売ってしまうぞ」

「どうやらクラーケンは魚河岸で買ったらしいな」
「やはりあれはスルメイカか……ならば……」
「ライダーマン、何か考えが?」
「ああ……マッスル、ガスボンベを探してきてくれないか?」
「プロパンガスかい?」
「そうだ、ここは東京ガスの供給区域外だからな」
「わかった、ならばすぐ見つかるだろうよ、すぐに戻る、だから……」
「わかってるよ、レディ9には怪我ひとつさせやしないさ」
「頼んだぜ!」
 マッスルが走り去ったすぐあと、クラーケンはどうとばかりに倒れた。
「ああ、疲れた……でも上手く行ったでしょ?」
 レディ9の作戦、それはクラーケンの触手の間を走り廻って触手同士を絡ませてしまうこと、そしてそれは想像以上に上手く行き、10本の触手が組紐のように絡んでしまったクラーケンは身動きが取れない。
「持って来たぜ、お? クラーケンが倒れているな」
 マッスルが両腕に一本づつプロパンガスのボンベを抱えて戻って来た。
「レディ9のお手柄さ」
「ああ、俺にとっては手柄より怪我がないのが何よりだけどな……ところでこのボンベはどうするんだ?」
「クラーケンに向かってガスを噴射してくれ」
「こうか?」
「ああ、下がっていてくれ」
 ライダーマンは火炎放射アームアタッチメントから火炎を放射、プロパンガスに点火すると、クラーケンは見る間に丸まって行く。
「ああ、そういうことか」
「スルメイカだからな……」
「炙ったするめになって行くな……ツマミにしたら一体何人分になるのかな」
 あたり一面が香ばしいにおいに包まれる、そしていつの間にかフー・マンジューの姿は消えていた。
「一体どこへ?」
「煙のように消えてしまったわ……」
 ライダーマンとマッスルはクラーケンに気を取られていたが、ライダーとレディ9は逃げるフー・マンジューを追っていた、しかし、どう贔屓目に見ても鈍足のフー・マンジューにどうしても追いつけなかったのだ。
「すまん、どうやら魔術に幻惑されていたようだ……」
 ライダーは悔しそうに言うが、ともあれ危機を脱したことに間違いはない、防衛の目的は果たされたのだ。

「しかし、随分とあっさりしているな……」
「あたしに手の内を見せないつもりだったのかも……」
「確かにそうかも……」
「どうやら厄介な敵が増えたようだな……」

ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

「元気でね……」
「晴子さんもお元気で……」
 知也と純子が施設を離れる日がやって来た。