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海のねこまんま

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「そこにいるのは、アトラか?」
彼の声がして、黒い大きな相手は 物陰に避けた。
「アトラ。捜したよ。窓を開けっぱなしで もう見つからないかと思った」
『じゃあな』
「その大きな猫が アトラを送ってくれたのか?」
彼は手に握っていたわたしのごはんを 黒い大きな相手の前に置いて下がった。
「アトラを守ってくれたんだね。 こんな礼しかできないけど食べていいよ」
『バンチョウ。こうやって食べるのよ。旨いんだから』
『此処まで来て 腹も空いたしな、食ってやるか』
黒い大きな相手は、道の上に置かれたものを食べにくそうに口に入れました。
『旨いが… け! やっぱりいつもの魚がうめぇよ。じゃあな』
「あ、食べてくれた。また遊びにおいで。餌用意して待ってるからね」
『バンチョウ。またバンチョウのねこまんま 食べに行ってもいいでしょ?』
黒い大きな相手は、わたしの所に戻って来ると 首のあたりを甘噛みしました。
わたしも黒い大きな相手の首に牙を向けました。
「おいおい、何してるんだ!」
わたしは、彼の声に離れました。黒い大きな相手は 振り向かずに帰っていきました。

わたしは、彼に抱き上げられて 部屋まで帰りました。
そのあたたかさの中で 黒い大きな相手を噛んだ時のにおいを思い出していました。

遠い遠いおかあさんのにおいの記憶といっしょにあった記憶。本当にそれなのかはわかりませんが、きっとそうなのだと思いたくなりました。
もしも このにおいを忘れそうになったら また《海のねこまんま》の味といっしょにクンクンして来ようと思います。

彼、心配かけてごめんね
でも、また脱走しちゃうかも……

知らない故郷だけど わたしにはもうひとつ増えたことが何より嬉しい。

彼とのごはん。
あぁ、お腹空いた! そして ちょっぴり眠い……

にゃぁ。にゃぁお。



     ― 了 ―
作品名:海のねこまんま 作家名:甜茶