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かき揚げ丼 フロンティア

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『これか? これは高速移動ができる能力者に、レーザーで3次元データを集めるセンサーを持たせているのだ』
 ノーチアサンさんが教えてくれた。

 地図のマークが複雑に動きだす。
 ビルの塀を、戦車が体当たりで壊す。
 そのままゆっくりビルへ向かい、後を追う歩兵の盾となる。
 自衛隊の10式や90式に比べると小さく、丸っこい。
 米ソ冷戦時代の、旧世代の戦車に似ていた。

 歩兵が持つ銃は、黒い鉄と木でできた自動小銃だ。
 そして同じことが、ほかの塀でも起こっている。

 彼らの頭上では、空を飛べる異能力者達が窓を破って突入する。
 レミュールさんもそこにいた。
 制服を着た、まさに高校生!
 みたいな人もいれば、ヤギに翼を付け、毛並みを緑にして二本足で立たせたような、怪人もいる。

 せいぜい5階建てのビルに、上からも下からも横からも踏み込んでいく。
 素人目にもテロリストに逃げ場はないように思えるよ。
 
 それと同時に、焦りというか、違和感みたいなものが心に広がってきた。
 僕の書こうとした物語は、就職が見つからず家族に理不尽にいじめられる青年が主人公だった。
 それがハローワークへ行く途中に交通事故で死んでしまい、剣と魔法のあるファンタジーの世界に行く。
 連れて行くのは、主人公をあまりに不憫に思った神様。
 モチーフは室町時代、戦国時代の日本だ。
 そこで、強力な妖術を持つようになった主人公が、悪党をバッタバッタ倒す物語だ。
 
 僕自身はそれほど悲惨な境遇じゃないけど、今現在に不満を抱き、逃げ出したいという気持ちは理解できる。
 そう思ったから、苛立ちを吹き飛ばすような爽快感ある話を目指したんだ。

 でも、今目の前にある世界は、僕の物語とはあまりに違う。
 それが、怖い。
 本当は、僕の意思によってここに来たわけではないんじゃないか?

 その時だ。
 艦内にけたたましい電子音がひびいた。

「緊急警報! ビル内部からです! テロリストが、次々に怪獣化していきます! 」
 オペレーター役の生徒会や士官候補生が叫びだす。
「遠ざけていたテロリストも怪獣化して、戻ってきます! 数は……22! まだ増えていきます! 」

 次の瞬間、ビルからそれまでの電撃やビームに変わり、巨大な毛むくじゃらの手足が突き出した。
 他にも、角や翼。機械的な大砲や建設機械のような腕も見える。
 明らかにビルの体積を超える巨大怪獣だ。
「うわっ! やられる! 」
 思わず口をついた。
『落ち着け。仲間は全員無事だ』
 ノーチアサンさんが、落ち着いた様子で説明しだす。
『自力で脱出するものも多い。それができなくともテレポーテーションで転送する能力者が控えている。その上、望む可能性を100%にする能力者もいる』
 
 ビルの爆炎が遠ざかっていく。 ノーチアサンさんは上昇を始めていた。
『私の中に入ればもう安全だ。バリアシステムは正常。捕虜たちも怪獣化していない』
 そう言われると、落ち着いてきた。

 爆炎が、大きく波打った。
 中から現れたのは、ワニのような大きな口。
 しかも、本物のワニよりはるかに巨大なそれは、ノーチアサンさんの舳先にかぶりついた!
 バリアシステムは火花をちらして阻む。それでも牙は離さない。
 口は、大木のような質感を持つ長い触手で支えられていた。
 触手はいかなる筋力を持つのか、ノーチアサンさんに巻き付くと、締め上げてきた!
『愚かな……』
 ノーチアサンさんはそれだけ言った。
 満艦飾よりも明るく光らせていたバリアが、その光を増した。
 それだけで、触手が信じられない圧力をうけてちぎれ飛んだ!
 ワニの口はかろうじて食らいついているが、あごは不自然な空き方をしてぶらぶら揺れている。
『しぶといな。だが火器さえ使えれば』
 灰色の船体が開いて、中から長い筒のようなものが見えた。
 それは、大砲だった。
 しかも、得体のしれないエネルギーを弾とする。
 1、2発唸りを上げると、ようやくあごは外れた。
 
 ノーチアサンさんは、そのまま上昇を続けた。
 だが下では、信じられないことが起こっていた!
 落下していく触手が、つながっていく!
 筋肉や神経だろうか?
 破片の切れ目から伸ばしあったそれが、結びつき合っていく。
 たちまち触手が復活した。
 しかも、以前より太くなっている!

 ビルの跡地では、爆炎が消えていく。
 消火活動の賜物ではない。
 巨大なあいつが、踏み荒らしたあとだ。
 あいつは、カオス・混沌そのものに見えた。
 さっき見た翼や腕が、なんの脈絡もなく、ある一点から伸びている。そんな感じだ。
 縦にも横にも奥行きも、100メートルを超えているかもしれない。

 周りには、小さな怪獣たちが近づいてきた。 
 こっちはティラノサウルスやライオンなど、まだわかりやすい姿をしていた。
 ……あれ?

「遠ざけていたテロリストが、戻ってきました! もうテレパシーも効きません! 進化しているのでは!? 」
 オペレーターの言うとおりだ。
 怪獣たちは、異能力にもう負けない。
 ようやく対等になった。と言わんばかりに、カオス怪獣の元へもどろうとする!  

「怪獣達はバリアを貼るようになりました。ノーチアサン! あなたのバリアがコピーされたのでは!? 」
 オペレーターの声に、ノーチアサンさんは初めて焦りの声を上げた。
『そんな馬鹿な! そうかんたんにコピーできるものではないぞ! 』
 船体では、ありとあらゆる兵器が起動する。

 地上では、内と外から生徒会とチェ連軍が挟み撃ちになっていた。
 達美ちゃんが高機動で翻弄し、両腕から光を放つ。何万度もするプラズマレールガンだ。
 舞ちゃんの物質粉砕する手が、怪獣を突く。
 でも彼女らも、他のメンバーの攻撃も、バリアの前に阻まれる!

 舞ちゃんは相手の足元を粉砕して、落とし穴にする戦法に切り替えた。
 その間なら、敵の攻撃も自分をすり抜ける。
 味方はなんとか戦力を集中させ、身を守っている。
 空からの支援もある。

 バリアを張るのにも体力がいるのだろう。
 敵の動きが鈍ってきた。

 だが他の地点では。
 中央のカオスにたどり着いた怪獣が、そのカオスに溶け込んでいった。
 するとカオスの、巨体の割に短い足。
 それが一気に巨大化した。
 あの巨体が、立ち上がった!
  
 その後、いっときの沈黙をおいて、オルバイファスさんから通信が入った。
『テロリストの支援者が、これまでの我々のデータを研究していたのだ』 
 船体の、ありとあらゆる兵器が起動する。
『あの怪獣たちが、中心の巨大怪獣に取り込まれることで、あらたな機能が使えるようになる。絶対に近づけるな! 』
『了解! ディミーチ! バリア・ブリーチング頼むぞ! 』
 ディミーチとは、地上にいる身長50メートルの青鬼のような宇宙人。
 擬態の説明をしてくれた、たんぱく質が地球人とは違う人だ。
 その手には、柄が身長ほどもある、巨大なハンマーが。
 そのディミーチさんが、天をにらみ、ハンマーを頭上から振り下ろした!
 持ち主の頭より大きな、打ち付ける部分から、光の塊が飛びだす。