ゲームの企画アイデア「物語で仕組みを解説します」
実況者が何やら騒いでるが、清十郎は集中していた。学生時代の剣道を思い出し懐かしい気持ちになる。バレンタインにチョコくれたあの娘、いまどうしてるかな? まさか引きこもりの子供に人生の足を引っ張られてるのでは? ありうるぞ。この世代は引きこもりに対する免疫がないからどう対処していいか判らない。助けを求めようにもネットにしか相談相手はいないし、でも誰に相談しても他人事にしかならない。同情するならカネをくれ! 相談相手を間違うと自己責任扱いされて、人生侮辱された気持ちでイライラする。いっそ、全ての親御さんが引きこもりの子供を抱えてたら、こんなに悩むこともないのだろうな。一人ぼっちだから被害者感覚が大きくなるのかもしれないな。なら皆加害者だよな。引きこもりのいない親たちは、存在するだけで、引きこもりの親を傷つけてる。皆が引きこもりになってくれたら、どれだけ堂々と胸を張って生きられるだろうか。皆が引きこもりなら自分も息子も、どれほど気が楽になるだろう。悪いのはそう、仕組みなんだ。、清十郎は悟った。
清十郎は思った。
引きこもりの親になってなかったら、引きこもりを持つ親に対して「自己責任だよ!」と、思ってしまうのだろうなと、結局自分も加害者になってる側の筈で、知らない内に人様に迷惑を掛けてる訳になる。もしかしたらバレンタインにチョコくれたあの子を傷つけてるかもれない。そんな恩を仇で返すような真似は武士道ではありえない。切腹しないといけない。なら、自分は引きこもりを持つ親になったことは間違ってない。間違ってないだぞ。間違っていたのは……
清十郎は悟った。連続して二度も悟ったのである。
視野が広くなる。目の前にかかっていた白い霧が、晴れていく。
正直見えなかった。何も見ていなかったんだと思う。この時の清十郎には……
「大丈夫ですか?」
と、やなぎの声
はっとする清十郎、既に試合は終わっているのさ
100も承知だ
この状況。賭博的には誰もがブーイングするとこである。
何
が、
清
十
郎
だ
よ
!
馬鹿やろう!
武士みたいな名前つけやがって! 勘違いするじゃねーか!
野次と中傷が浴びせられる
しかし、これも仕方が無ないこと。 やなぎの意識を清十郎に向かわせ、友達になるキッカケを作るには、これくらいしないとら覚えて貰えない
ゲームのプレイヤーは100万人はいる。その中では清十郎の存在感は100万分の1しかない。なんでもいいから、目立つことやらないと、記憶すにすら残してもらえない
清十郎は、やなぎに
「痛かった」
と答えた。
痛いはずかないのに痛がる痛いキャラに清十郎はなりきった。
そういえば、清一も子供の頃は剣道やっていたな。
やなぎさん、もしかして剣道経験ある?
「ありますけど?」
剣道経験があるやなぎ
息子である可能性が高い。とりあえず、なかよくなっとこう
清十郎「やなぎさん、プレイ時間みたんですけど初心者ですよね? でも戦いはつよい。 一緒に冒険しませんか?」
やなぎからの返事は曖昧だった。断りはしなかったが、「行く」とは言わない。
「行けたらいく」みたいな感じ。断りたい時によく、行けたら行く
を使う気がする
清十郎「デッドワールドでの冒険は興味ないですか? だったら」
言いかけて清十郎の言葉が遮(さえきを)られる
やなぎ「実は、闘技場を攻略したいんです」
闘技場はプロのプレイヤーともなると、掛け金で億単位のお金が動く
プロ認定されて勝ったときのギャラにはプレミアムがついて倍にもなる。国際試合ともなると、賞金は1000万円にもなり、国内でも大会賞金でも500万はもらえる。プロゲーマーの一部はスポンサーがつき、コスプレイベントや講演会、広告収入にて年収が1億を超える者もいる。やりたがる若者がたくさんいる。
清十郎「やなぎさんって、年齢いくつ? キャラクターデザインは、若いけど、設定年齢40歳だよね?、、ゲーマーの寿命は30歳前後といわれているよ?」、
やなぎ「実は僕、二十歳なんです。闘技場では年齢を上にした方が相手を油断させられるかと思って」
嘘はついてないとすれば、息子とは年齢が合わない
清十郎は、やなぎの調査をひとまず保留し、調査ターゲットを ジャクソンに切り替えた。スパロウはまだログインしていないから、後回しで
ジャクソンは剣を担いで、陽気に振り回しながら歩いてる。行儀が悪いが仲間たちとワイワイやっている。楽しそう。
息子も昔は人前で笑っていたけど、今では誰にも反応しない。親せきが来ても。友達がきても、部屋に存在していないかの様に、物音一つ立てない。
息子がコミュ障でネットですら難民してるなら、ジャクソンはありえない。親としてはジャクソンのように。せめてネット世界だけでも幸せであって欲しいと思うところだが
清十郎は少しだけ話を聞きに行った、
「すいません、モンスター狩るの楽しいですか?」
清十郎にとっては純粋な疑問だった。モンスターは人間の様に動きが複雑でないから、ワンパターンな戦いになって面白くないのだ。
ジャクソン「面白いよ?、普通のモンスターは流石にダメだけどな。でもたまにA組が混じってるから、その時は興奮するね」
清十郎「A組? そういえば、説明書に書いてあった。難しい単語と大量文字列で理解を放棄したけど?
「A組ってのは、こことは別の世界にある。Aに所属した人は俺らと違う世界でプレイしてるのだけと、このB世界と少しだけ干渉しあってる。たとえば、俺は剣士の姿してるよな。でもA世界から俺を見たらモンスターにしか見えないんだ」
もう一回説明して
「だから、A世界でも俺らは存在していて、今は俺らはB世界の1655の6254座標にいるのだけと。、俺らの分身がA世界の同じ座標にいるんだ。、分身が死ぬと俺も死ぬし。俺が死ねば分身も死ぬし。分身は互いに行動が同期(リンク)、つまり繋がりあってて、でもA世界にいる俺の分身はモンスターの形をしていて、A世界のプレイヤーに命を狙われるんだ。ここまでの内容分かるか?」
つまり、a世界のプレイヤーが、この場に近づいでくると、清十郎が敵に見えて、清十郎もa世界の人達がモンスターにしか見えないから、バトルする羽目になる?、
「そうそう。簡単に考えると、要するにモンスターの中にはプレイヤーが紛れ込んでるということなんだが。」
プレイヤーが紛れてるから、対人戦みたいな心の駆け引きバトルができるの?
「そうそう。そういうこと。、このゲームのウリポイントらしいんだが、わかりにくい。あとテレポートがあるから、いつも油断ならない。、ほら、、攻撃たきあよ!」
焦って舌を噛んだジャクソン
突然目の前に、モンスターが3体現れ、乱戦になったからである。、、
いそがしい、
ジャクソン「こいつら、たむろしてる俺らを見て、プレイヤーだと、思ったんだ。、、単なるモンスターなら、和気あいあいで道端で喋ったり、しないから」
そう言って、ジャクソンは消えた。テレポートしたのだろう。、
モンスター3体はつまらなそうな顔をしている。言葉は通じないみたい。、
作品名:ゲームの企画アイデア「物語で仕組みを解説します」 作家名:西中