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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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少しだけ見開かれた目は、空の彼方を、いまではないいつかへ向けられているように空虚だった。

「須丸」
「え?はい、なんですか」

我に返って笑顔を見せる。

「……なんかぶつぶつ言ってたぞ」
「そう…ですか?」

おかしなやつだ。でもなぜだろう、こいつが遠い場所を見据えるような目をするたび、伊吹は猛烈に不安になる。

「せんぱーい、見て見て!ジャガイモやいてみたー!」

深刻な心のうちを吹き飛ばす呑気な声に顔を上げると、颯馬がアルミホイルのつつみを火箸で挟み、高々と掲げているのが見えた。伊吹は思わず吹き出す。あいつは本当に、いい意味で空気が読めない。まわりに流されないマイペースさと愛される才能はピカイチだ。

「ヒトガタ焼いた火で、イモ焼いたんかよ…」

瑞が渋い顔をしている。まあいいではないか。あいつの明るさに、今回はいろんな意味で救われている気がする伊吹だった。

「颯馬はいっつもなんか焼いてるな。まえはシイノミだった」
「ねー、バターつけて食べよー。ちゃんと濡らした新聞で包んで焼いたから、ほかほかだよ。郁ちゃんたち呼んでくるね」

縁側で靴をぽいっと脱いで、颯馬は客間へ向かった。

「元気ですねあいつ」
「呪いも吹っ飛ばすとか…どんだけだよ」