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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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流された血



潤子が買い物から戻り、夕食の準備を始めている。瑞はその背中を見つめ、切り出した。

「すみません、お聞きしてもいいですか」

どうぞ、と彼女はこちらに向き直って微笑んだ。優しいおばあちゃん。志帆が唯一の味方だとそう言っていたのを思い出す。

夕刻。志帆はまだ分家から戻らない。伊吹と颯馬は、本家筋の家系図を借りて熟読中だ。郁は昨晩、足音騒動のあとよく眠れなかったため、仮眠をとっているところだった。

「あなたは代々、古多賀家に仕えていると聞いています。歴代の当主や古多賀のいえの人間の中に、女の幽霊を見たというひとはいませんでしたか?」

伊吹のもとへやってきた血まみれの女。あれを、歴代当主も見ているかもしれない。

「女、ですか…わたしにはわかりません。ああでも…女…」

コンロの火をとめ、潤子は思い出すように天井を見つめる。

「一族の古い方は、家の外から女が入ることを大変お嫌いになりますねえ」
「というと?」
「代々ご長男と婚姻されるのは、一族の遠縁から選ばれた女性で、お見合い結婚なんですよ。一般女性とお付き合いをしていても、絶対に結ばれることはないようです。必ず、遠縁のものから選ばれます」

それは大変に時代遅れな風習であるように感じられる。一族の血姻に絶対の誇りを持っているということなのだろうか。

「真司郎さんのお嫁さんも…」
「ええ、真司郎さんの叔父の母親の筋の女性だった方です」
「それもその、古い方とかいうひとが娶せたのですか?」

潤子は微笑んだ。