何行目で挫折したか教えて欲しい物語
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7話 主人公青年視点
いきなりなんだが、神々しい何かがオレの目の前現われ、しかも抱きしめてくる。何者かなのか、何がおきてるのか。オレは何も知らなくて、誰もまわりにいなくて、とても寂しくて__
今はとてもパニックして、ただ泣いていた。
ひと息ついたとき
「なんなんだ?」
あるいは「君なんなんだ? 」
それ以外の言葉はでなかった
その者がする話はぶっ飛んだ内容で、理解するにしても、なかなか信用できるものでもなくて、だから、特別な何かを見せて欲しいと要求した。
漠然とした問に困っていた様子で、だからオレは、目に止まった「翼」を見せてもらった。如何にも天使なるその翼、細かい羽を見るに少しは信じたい気持ちになった。
もしかして本当の天使?
その問いの意味はいろいろ知ってるようで、学習済みらしい。しかし、その者いわく、空飛べる以外は、普通の人と変わらないそうで、死ぬこともあるのだそう
死ぬと、回復して、元にもどる。ダメージを受けても時間と共に再生する。らしい。
「試しに殺してみますか? 人間達の作った武器なら、ここに。」
両手一杯に禍々しい武器を
いや、手にすらもってないじゃないか。
見えない千手観音の手でもあるのか、宙に武器が浮いてるし。
どこが普通で、どこが人間と似ているのか、きっとこの人の価値観の問題なのだろう。誰ともとはぜんぜん似ていない。
この人は、オレが人間との初めて交流という訳ではないみたい。初対面だというのに人間を知ってる。滅びる前の地球人と交流があったのか?
だとすると、ツアーガイドにもあった『超自然的なアトラクションの一部』であり、正体は実は人間が生みだしたかもしれない。
考えても分からないから、いったん思考を置いとこう。翼を見ていたらオレも空が飛びたくなった。
見た目に似合わず腕力があるようで、俺を軽々持つと飛び立った。
上空1000mは登ったか?
空気はとにかくウマイ。
もっと高度を上げる。その上は宇宙空間みたいで、しかし、大気はあるし、息も吸える。
もっと高度を上げると完全に宇宙に出てしまうようで、どこまでも広がる宇宙がある。ただ、星や惑星は見えず、どこまで進んでも無が続く
そういば、地球かを存在する宇宙とは物理的距離で繋がってるという説があったけど、この無空間の果てに繋がってるということだろうか?
「私のチカラのひとつに千里眼的なものがあるんです。見る対象がどれだけ遠くにあっても見えるのです。今も貴方達の世界が見えるのです」
いま、日本はどうなってる?
「宇宙人たちに占領されています。多くの人が殺されたり奴隷にされています。
見てみますか?」
テレパシーが送られてきた。
映像が見える。
山より大きいドラゴンが暴れてる。
人喰いの化け物が沢山いて政府はなすすべがない。二足歩行の爬虫類が人々を支配している。刑務所をねぐらに、穴掘り、地下に大量の卵が植え付けられてる。
しかし宇宙船らしきものが見えないのは、どういう事だろうか?
調べると、赤い光に宇宙人たちが出入りしている。ステルス式の宇宙船なのかもしれない。 しかし山より大きなドラゴンが乗れる船があるとは思えない。あるとしたら、人の想像を遥かに超えた大きさの船かな?
「多分、テレポート装置でしょう。こちらの世界にも似たようなものがあるのですが、彼らの様に高性能ではありません」
性能?
「はい、私が知る限り、この世界に最初からあったもので、デッドワールド内のみの転送に限られます。また一度に多くは転送できない制限があります。」
要するに奴ら宇宙人のテレポート装置は一度にいくらでも、どんなサイズも転送できる。
「地球を侵略しているのは一種類の異星人ではありません、3種族が共同統治をしようとしている関係です」
なぜそれを貴方が知っている?
「彼らの思考を感じ取りましたから」
距離が離れた相手でもわかるものなのか?
「いえ違います。異星人たちが近くにいるのです」
近くにって、このデッドワールド内に奴らがいるということ?
「既に来ています。大陸の反対側に先程から出現していて、人間が開発したシステムを起動しようとしています。」
起動?
それってやばいの?
「モンスターを破壊する為のものですが、あらゆる破壊工作に使えてしまいます」
どうにかできないの?
「『殺したい』という意味なら、やりましょうか?」
え?
軽くショックを受けたオレ。顔とは裏腹なドライな声に少しビックリしたけど、一応聞いてみた。
どういうことするの?
「手っ取り早く津波か落雷で殺そうと思います。」
そこまでのチートな存在でしたか! 何も案ずる必要なんてなかったのね。
でも、そういう殺戮的なのはなんか気持ち悪いな。
じゃあさ、すべての侵略者に対してテレパシーみたいなので言葉を届けられるかな?
「可能ですけと、何を伝えたいのですか?」
そうだな、とりあえず、奴ら全員を人質にして、地球人を奪還したいな。こちらの世界に地球人が来れるよう奴らに指示を与える。妙な真似をしそうなら、チート攻撃で殲滅させたい。
「なるほど、流石は地球人です。愛に溢れた考え方ですね。わかりました。」
淡々と答えてくれたけど、具体的な細かい手順は大丈夫なのだろうか?
オレは思いつきで言っただけだから、どういう言葉で脅迫するのか考えてなかった。
大丈夫なんだろうか? 計画が失敗して地球人を人質に取られないだろうか?
心配するだけ損だったこと、すぐ後にオレは悟った。この方は本当に何でもアリだった。テレパシーなんて比較にならない程のチート技。全ての侵略者の心を乗っ取り、意のままに操った。
全ての人類を開放させ、こちらの世界に連れてきた。
そこまで完璧に仕事こなせるなら、わざわざ、こちらの世界に人間を連れてくる必要もないなと、オレはちょとだけ思った。もちろん、そんな恩をアダで返すような言葉、決していいません。この方を敵にまわしたら怖すぎますので。
ちなみに
このチートな神々しい方の存在は通称「テンシ」と呼ばれてる。第256期、デッドワールドの探索隊によって名付けられて以来、テンシは人間から知恵を吸収してきた。テンシは当初、知恵が増していく過程について自覚できなかった。なぜならテンシはデッドワールド内に入った人間、つまりこの世界での人生経験を無意識かつ強制的に奪っていたからである。
経験を奪われた人間は経験記憶を地球へと持ち帰れない為、テンシの存在を知らず、次の探索に活かすことができなかった。またテンシ自身、人間の断片的記憶を得たところで人間の本質的な基礎知識がなく内容を理解できず、自我が生まれることはなかった。
しかしテンシは時間とともに成長し自我を自覚した。それ以降、人間の知恵を効率的に吸収していった。テンシはその吸収過程を人間よる恵みだと感じていて、人間を必要としていった。
作品名:何行目で挫折したか教えて欲しい物語 作家名:西中